カープ一筋23年の佐々岡真司氏を新監督に迎え挑んだ球団創立70周年の記念シーズン。結果は52勝56敗12分けで5位。2年連続のBクラスで2020年の戦いを終えた。

 ここでは、数々のドラマが繰り広げられた2020年ペナントレースの戦いを振り返っていく。今回は、7月8日のDeNA戦(マツダスタジアム)。堂林翔太の逆転満塁弾で勝利した試合を振り返る。

7月8日のDeNA戦。1点を追う8回裏、1死満塁で打席に入った堂林翔太選手が、逆転満塁本塁打を放ち勝利に貢献した。

◆11年目の覚醒へ。チームの連敗を止める劇的な満塁アーチ

 2014年以来6年ぶりに開幕スタメンに名を連ねて以降、高打率をキープしていた堂林翔太。再起を期して今シーズンに挑んだ背番号7が、この試合でも大きな仕事をやってのけた。

 開幕カード以来の対戦となったDeNA戦。堂林翔太はこの試合、今シーズン初めてサードでスタメン出場した。久々の三塁守備を無難にこなし、3回裏には1死満塁の場面で同点タイムリー。攻守で存在感を示した。しかしチームはDeNA先発・濵口遥大の前にチャンスを作るも勝ち越し点を奪えず、7回まで何度も塁上を賑わすも15残塁。堂林と松山竜平にタイムリーによる2点に抑えられていた。

 DeNAの1点リードで迎えた8回裏、カープはこの試合3度目の満塁のチャンスをつくると、打席には堂林。DeNAの4番手・パットンの3球目のストレートをとらえると、打球は快音を残しバックスクリーンに着弾。4連敗中のチームを救う、6年ぶりの逆転満塁弾となった。

 勝ち越したあとの9回は、代役守護神に指名された菊池保則が無失点に抑えてプロ初セーブ。また、8回を無失点に抑えたプロ6年目の塹江敦哉がプロ初勝利。チームは連敗を止め、堂林は2安打5打点の大活躍。打率は.415となり、リーグトップに躍り出た。

「外の変化球に対して、もちろん振るときもありますけど、前よりもがっついて手を出すことは減ったと思います。それを我慢しながら甘い球を待っている状況なので、結果も出ていると思います」

 堂林自身が語る通りシーズン前半は、三振数も少なく、打席を数多く重ねる中で、落ち着いた雰囲気も醸し出していた。

「打席内ではあまり深く考え過ぎないようにしています。とにかく次の打者につなごうと。その意識を持つようにしているくらいですね」

 変化球への対応、そして後ろへつなぐというシンプルな意識が、今シーズンの堂林の打撃を支え、ここ数年間の悔しさを晴らす躍動の土台となってきた。

「正直なところ、何度か自分でも腐りそうになるときはありましたけど・・。そこをずっと堪えて、諦めるということはなかったので『何か良いことがある』と思いながらずっと練習を続けていました」

 堂林は今シーズン、111試合に出場し、打率.279、14本塁打、58打点を記録。本塁打は自己最多タイ、打率と打点は11年目でプロ入り最高の数字を残した。無観客のマツダスタジアムに快音を刻んだこの日の起死回生の逆転満塁弾は、その後の活躍を予感させる劇的なアーチだった。

●試合結果
7月9日
カープ6ー3DeNA
勝:塹江 1勝 
S: 菊池保 1S
負:パットン2勝1敗
本塁打:(広)堂林3号