第8節のFC東京戦(●0ー1)からまさかの連敗を喫したチームですが、どの試合もロースコアであり、接戦をものにできていません。守備の面ではこれまでと変わらずチーム全体として高い意識を保てていますが、攻撃に関しては決定力不足という明確な課題が見受けられます。組み立て自体は決して悪くありません。またシュート自体も生まれているのですが、枠外に飛ぶなど相手を驚かせるようなシュートが少ない印象です。

 現在のチームは先制すれば良い形で試合を展開できていますし、90分トータルではチャンスの時間帯がない訳ではありません。しかし連敗中のチームはそうした時間帯に得点を決めきれず、むしろ自分たちのチャンスを逆手に取られ失点してしまっているシーンが数多く見られました。もちろん第10節の横浜FM戦(●0ー1)では判定に泣かされた部分もありましたが、それまでに何度もチャンスをつくっていただけに、川辺選手のシュートうんぬんではなく、しっかりとチャンスを物にして試合を勝ちきるだけの逞しさをチームに求めたいと思います。

 攻撃陣の中核として機能していたドウグラス選手が神戸戦から欠場していたことは大きな痛手でしたが、前線の選手たちはそれぞれ自分たちの持ち味を発揮していた印象です。野津田選手は得点という目に見える結果こそ出ていませんが、前線から泥臭くボールを追い、運動量はずば抜けています。

 また1トップを務める渡選手にも大きな期待を持っています。彼にとって今季はクラブにおける自らの立ち位置を決める重要なシーズンです。攻撃だけではなく守備でも非常に高い献身性を見せていますし、サッカープレーヤーとしてのキャラクターはダイナミックで面白い選手です。良い意味で何をやらかすか分からない突き抜けた雰囲気を感じるだけに、ぜひ攻撃の要として存在感をさらに高めてほしいと思います。


(広島アスリートマガジン2019年6月号から一部抜粋・続きは本誌にて掲載)


▼ 吉田安孝(よしだ やすたか)
1966年11月22日生。広島県出身。元サンフレッチェDF。現在は広島テレビ「進め! スポーツ元気丸」などのサッカーコメンテーターとして活躍中。