全ての変化は、進化のためである。小さな設計図も大きな設計図も持ち合わせている。そのなかで、まず着手すべきことに集中する。これが宇草の思考なのだ。だからこそ、課題とされるスローイングにも落ち着いた気持ちで取り組んでいる。

 「できる、できない、そこばかりに集中してもいけないと思います。ゴール地点を見ながら、今の課題を意識するようにしています。なら、今やるべきことが見えてきます」

 秋季キャンプでは廣瀬純一軍外野守備・走塁コーチとマンツーマンでのスローイング練習にも取り組んだ。開きを抑えた体の使い方、リリースの感覚。必要とされるパーツは徹底的に見直した。

 「いろんなアプローチでやっていただいて、客観的にスローイングを見つめ直すことができました。とにかく、良くなると信じてやっています。自分の芯を持って、自分に期待して、ひとつひとつのプロセスをやっていきたいと思っています」

 メンタル面か技術面か。ここも、答は二者択一ではない。かといって、全てが課題なわけでもない。

 「技術も足りないでしょうが、一番は気持ちです。不安になってしまう自分に引っ張られず、自分の背中を押してくれる自分を信じてやりたいです」

 ならば、自分が自信を持って背中を押したくなる自分になるしかない。答えは、今、ここで取り組む一瞬一瞬にしかないようだ。打撃フォームの改良、スローイングの向上、もちろんフィジカル面のさらなる強化。23歳になったばかりの好青年は、ひとつひとつの『点』へ丁寧に向き合う。それは、いつしか『線』になることを、彼は知っている。

取材・文/坂上俊次(RCCアナウンサー)
1975年12月21日生。テレビ・ラジオでカープ戦を実況。 著書『優勝請負人』で第5回広島本大賞受賞。2015年にはカープのベテランスカウト・苑田聡彦の仕事術をテーマとした『惚れる力』を執筆した。