確率か長打力かの二者択一ではない。かといって、むやみに両方を追うわけではない。

 「できないことをやるのでなく、できることを積み重ねようと思います。その積み重ねが、次のできることを生むのだと感じました」

 やはり地に足が着いている。ホームランについての考え方も、そうである。いきなりフェンスオーバーをイメージしているわけではない。

 「ホームランを打ちたいばかりでは、ホームランは生まれません。まずは、そのためにできることです。しっかりスイングしよう。振っていこう。そこからだと思います」

 一軍キャンプを完走し、実戦でも結果を残すなど存在感は十分に高めた。開幕するはずであった3月20日は二軍で迎えたが、打撃面を中心にした評価は低いものではない。しかし宇草は、さらなる進化のため変化を厭わない。
 ある試合、彼は全4打席にわたって打ち方を変えていた。「松山(竜平)さんや丸(佳浩)さんをイメージしてやってみました」。受け答えも、実に爽やかなものである。それでいて、考え方は深い。決して、一流選手の形だけをなぞったものではない。

 「基本的には、静から動のイメージでやってきましたが、東出(輝裕)コーチのアドバイスもあって、動から動のイメージで取り組んでいます。まだまだ再現性は低いのですが、そうすることで、ゆったり球を見ることができます」