攻守が噛み合い見事、1年でJ1に返り咲いたサンフレッチェ。

◆サポーターの存在がJ1昇格を決める大きな要因に

― 今年はエースとして得点を積み重ねるだけでなく、キャプテンとしてチームを引っ張る姿も目立ちました。周囲からはMVPという声も挙がっていますが。

「いや、MVPはチーム全員だと思います。試合に出ている選手も、出ていなかった選手も含めて…。11人だけで長いシーズンを戦うことはできませんからね。今年は本当に誰が出てもある一定のクオリティのサッカーができていたと思うし、僕が代表に行って不在でも、素晴らしいサッカーをして勝っています。それくらい個に頼るサッカーじゃなくてチームとして戦うことができていました。もちろん今年は、サポーターの存在もすごく大きかったです。J1からJ2に落ちればサポーターの数が減ってしまうのが普通の原理だけど、今年のサンフレッチェに限ってはむしろ観客が増えたくらいですからね。アウェイのときも逆にホームじゃないかと思うくらいの雰囲気をつくってもらいましたし。本当に一つになって戦うことができたと感じています」

― 寿人選手は降格したとき、『J2に落ちたことで全てがマイナスになるわけではない』と仰っていましたが、今、改めていかがですか?

「毎年2~3チームはJ1からJ2に落ちて、逆に毎年2~3チームはJ1に上がります。それは日本だけではなく、どんな国のプロのリーグでも毎年起こることで絶対に避けられません。だから降格しただけでチームが壊れてしまうようでは、それくらいの価値しかないというか…。J1、J2は関係なく、このクラブでサッカーができるという喜びや誇りを持つことが大切だと思うんです。僕はサンフレッチェでプレーできることがすごく幸せだと感じているので、真っ先に残留を宣言しました。ただ僕だけじゃなくて他のみんなもチームに残りましたからね。移籍しようと思えば移籍できた選手もたくさんいたと思うけど、選手それぞれがこのクラブをすごく好きなんだなと改めて感じました」

― サンフレッチェというクラブの特徴でもありますね。

「ユース出身の選手がこれだけたくさんいて、なおかつ活躍しているのは、世界を見渡してもバルセロナくらいじゃないですかね。そういう部分では、地道に育成を続けてきた成果が出ているんだと思います。とにかく1年で復帰することができたので、これから先はもっともっと地元である広島市民、県民に愛されるクラブになっていかないといけません。ビッグクラブに対抗するためには、どれだけ地元に愛されるかということに尽きると思うので、そこがこれからのクラブの課題なんじゃないかと思います」

― 来年はJ1が舞台になりますが、自分たちのサッカーで勝ち上がっていく自信はありますか?

「みんな自信は持っていると思います。相手が強ければ強いほど、どこが通用してどこが通用しないかがより表に出てくると思うので、早くいろんなクラブとやりたいです」

― それでは最後に、2008年シーズンの声援に感謝の意味を込めて、サポーターの方へメッセージをお願いします。

「降格が決まった日からずっと一緒に戦ってくれて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。地元開幕の愛媛戦で、昨年の地元開幕戦よりも多くのサポーターに来ていただいたときはものすごく驚きました。正直なところ、ゼロックスを獲ったといってもJ2だし、サポーターがいなくてスタンドがガラガラだったらどうしようという怖さがあったんです。9月に昇格と優勝を決めた大きな要因の1つに、間違いなくサポーターの存在があると思っています。J2に降格したこと、全部が全部悪いわけではないと感じられたのも、サポーターの存在があってこそです。もう二度と悲しい思いをさせないように、もっとたくさんの試合で笑顔を見られるように、J1で一緒に勝利の喜びをたくさん味わっていけるように、これからも頑張りますので応援をよろしくお願いします」

(広島アスリートマガジン2008年12月号掲載・表記、所属等は当時のまま)