プロ野球観戦で欠かせないのが、年々進化を続ける『スタジアムグルメ』だ。それぞれの球場で趣向を凝らしたメニューが生まれ、遠征時の楽しみになっているというひともいるだろう。

 そんなスタジアムグルメにおいて、カープファンから絶大な人気を誇る定番メニューが『カープうどん』だ。広島県民のソウルフードとも言える逸品を、歴史、値段、容器……あらゆる角度から紹介していく。

旧広島市民球場の『カープうどん』売り場

 今やすっかり名物となった『カープうどん』。その歴史は古く、なんと旧広島市民球場が設立された1957年(昭和32年)当初から販売されていた。今年で誕生68年目を迎える、超ロングヒット商品だ。

 あっさりした口当たりで、大人から子どもまで食べやすい味になっており、最後の一滴まで飲み干すファンも多い。ダシはカツオベースではないかと推測されるが、真相は「企業秘密」。実はダシの味付けに関しては、カープ初優勝後の昭和53年に、一度、微妙な配合の変更があったという。ダシによく合う柔らかめの麺も好評だ。球場で試合を見ながらツルツルッと頂くには、この方が適しているのかもしれない。

 現在、カープうどんは『全部のせ』、『天ぷら』、『肉』の3種類が販売されている。初代カープうどんの具は天ぷら。肉うどんやきつねうどんが登場したのは、昭和50年代に入ってからのこと。当時の値段は一杯30円で、街で売られているお好み焼きの平均的な値段が10〜20円だったことを考えると、少し割高な感もあった。現在は『天ぷら』750円、『肉』800円、『全部のせ』900円で販売されている。季節ごとに『冷やし』も登場するなど、そのバリエーションも見逃せない。

 うどんの中身はほとんど変わっていないが、実は、容器だけは常に進化を続けている。

 初代の器は唐津焼で、使い捨てのものではなかった。丈夫さではこの上ないが、カープの敗戦に腹を立てた観客がグラウンドに投げ込むこともあり、危険だということで、二代目の発泡スチロールの器に変わった。こちらは軽くて回収の必要もなく非常に便利。しかし容器が薄いこともあって、熱々のうどんを自分の席まで持って帰るのに一苦労だった。現在は黒地に『Carp』のロゴが入った使い捨て容器になり、マツダ スタジアムでは今日も多くのファンが名物の味を求め列をなしている。