2020年は堂林翔太“覚醒”のシーズンになったと言っても過言ではない。開幕序盤から安打を量産し、8年ぶりに規定打席に到達するなど、最後までレギュラーとして活躍。期待されながらも結果を残すことができなかった男が、プロ11年目で見事な復活劇を見せつけた。

 11年目の覚醒を見せファンを魅了した、堂林翔太のこれまでの軌跡を、当時の本人の言葉とともに辿る。今回は、覚醒を兆しを見せた2020年シーズン前半戦に焦点を当てて振り返っていく。

6月19日のDeNAとの開幕戦。堂林翔太選手は2014年以来6年ぶりに開幕スタメンの座を勝ち取った。

◆佐々岡新監督のもと始まった11年目のシーズン

 カープの背番号7・堂林翔太のプロ11年目。球団創立70年を迎えた記念シーズン、佐々岡真司が新監督に就任し、V奪回に向けて始動した。

 春季キャンプ、堂林は例年同様に、松山竜平、安部友裕らとの一塁ポジション争いの中にいた。筆頭候補である松山がキャンプ後半に故障離脱すると、そのチャンスを生かしてバットで結果を残し続けた。ツキも味方した堂林は、3月の練習試合で大きなアーチを連発し、印象的なアピールを重ねていく。

 好調のまま開幕に突入しようとしていた矢先、アクシデントが起きた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が延期。先の見えないなか、開幕に向けて調整を続けることとなった。

「特に特別なことはやらずに、春のキャンプから続けてきたことをそのまま継続してやる意識を持って、延期期間を過ごしていました。春のキャンプでは、強く振ることをテーマにずっとやっていましたが、開幕延期になったことで、またキャンプに戻った気持ちで、強くスイングスピードを上げるつもりで練習に取り組んでいました」

 4月以降、限られた練習時間の中でも、堂林は変わらず、黙々とバットを振り続けた。誰もが経験したことのない時間を過ごす中、約1カ月半ぶりに再開した5月の全体練習でも、堂林は変わらぬ状態の良さをアピールしていた。

 そして6月、開幕直前に再開された練習試合では、「右投手に対しても良い結果を残せれば、また使ってもらえる」と、課題にする右投手から2本のアーチを放つなど好調ぶりをアピール。この時期、松山が再度離脱していたこと、そして開幕(対DeNA)の相手先発が左腕の今永昇太ということもあり、堂林の開幕スタメン入りが濃厚となっていた。