現在のカープを支える主力選手のルーキー時代を振り返る本企画。今回は、セ・リーグ二塁手のシーズン連続守備機会無失策記録を更新し、二塁手としては史上初となるシーズン守備率10割という偉業を達成した、菊池涼介のプロ1年目の想いを当時の独占インタビューで語った言葉をもとに振り返る。

中央球界では無名ながらドラフト上位で指名された菊池涼介選手。プロ1年目から一軍に昇格し、二塁手として経験を積んだ。

◆“全ては心から始まる”、その教えが成長につながった

 決して全国的に注目された選手ではなかったものの、ドラフト2位で指名された菊池涼介。守備・走塁で大きな可能性を秘めた、次代のリードオフマン候補として期待され、初めての春季キャンプを過ごしていた。しかし、周囲の期待とは裏腹に、菊池の胸にあったのは“戸惑い”だった。

「これまで見られていると感じながらプレーすることがなかったので、緊張感があります。1球に対してエラーをしたくないという思いが強くなり、大事に行き過ぎてしまうところがあります。自分の中では力んでいるつもりはなくても、どこかに力が入っていて筋肉痛がひどいんです。見られている視線を感じているから良いところを見せないといけないという思いが自然と湧きます」

 今では守備の名手として知られている菊池だが、プロ1年目は、ミスに対して敏感になり、打撃や走塁に関しても、プロのレベルの高さを痛感していた。

「(自分自身のプレーを評して)ヘタクソでしょう! 打撃に関してはもう、問題外。大学でやってきたこととプロで経験していることは全然違うものなので、自分が一番ヘタクソだと思っていろいろ聞いてやっていきたいです。守備と走塁に関してもレベルが違うなというのは感じています。ただ、ショックという気持ちはなく、今はまだ一つひとつ習得していく段階だと思っています」

 プロの壁を感じながらも、それを乗り越えるため、キャンプから必死に鍛錬を続けた菊池。その菊池のベースをつくったのは高校の3年間だ。野球選手としての基礎ができただけではなく、心の成長も大きかったという。

「(高校の)監督が常に口にしていた『全ては心から始まる』という言葉を教えられたというか、洗脳されたというか(苦笑)、人間性を鍛えられましたね。それに『走る姿はその人の心を映す』という意味がある『走姿顕心(そうしけんしん)』という言葉があるんですけど、守備に就くときでも『よっしゃー行くぞー!』と走るのと、だらーと走るのは全然違いますよね。そういったことを一つひとつやってきたからこそ、大学4年間での成長につながったのだと思います」

 思い通りのプレーを首脳陣に披露できないもどかしい日々が続いたが、菊池は決して諦めることなく、ガムシャラにプロの道を歩み続けた。

 開幕こそ二軍で迎えたが、6月に初の一軍を経験。7月に一軍レギュラーだった東出輝裕が故障で離脱すると、以降は二塁手として試合出場を重ね、守備範囲の広さと破天荒なプレーで徐々にスタメンのチャンスをつかんでいった。翌年からは二塁手のレギュラーに定着。そして、誰もが認める世界を代表する二塁手へと躍進を遂げていく。