— 4月にベンチ入りは果たしましたけど、リーグ戦の方はすぐにスタメン復帰とはなりませんでした。

 「自分自身に目を向けていましたしACLに出場しながら手応えも感じていたので、リーグ戦でも使ってもらえればチームに貢献できると感じていました。なので、その時点では焦りやもどかしさはなかったです。時を待つではないですけど、今は自分のやれることをやるという思いで日々を過ごしていたので」


— 稲垣選手が欠場している間、リーグ戦では松本泰志選手がレギュラーに定着していました。

「若いですし持っている能力というのは、僕から見てもあの歳ですごいなと思います。元からやればできる選手だと思っていたので、彼が活躍することに関して驚きはなかったです。ポジションを奪われる形になっていましたけど、先ほど言った通り自分自身も手応えを感じていたので焦りというのはなかったですね」


— ただ改めてチームの中で誰一人レギュラーの座が保証されていない、ということを強く感じるシーズンでした。

「たとえ今シーズン出られなかったとしても、自分自身の能力とか実力というものが変わるものではないので。いつか評価してもらえる、という気持ちもありました。17年の前半も出場できない時期がありましたけど、そのときとはまったく違う感覚でした。ポジションを奪われるというリスクというのはプロである以上、常について回りますし、このチームに限った話ではないですから変な怖さはないです。自分が求められなくなったらこのチームでは終わりだ、くらいのドライな気持ちも持ってやっているので。もちろん求められるように、自分の良さを出せるようにプレーしていきますけど、それがチームの勝利に結びつかないのなら、それは仕方がないくらいの気持ちを持っています」


— そんななか7月にポジションを奪い返してからは、11戦負けなしというクラブタイ記録もありました。

 「当然優勝を目指してやっていたので、負けなしではあっても『まだまだできる』という感覚を持ちながらプレーしていました。試合を重ねながら成長しているというのは個人としてもそうですけどチームとして感じるので、そこは本当に大きな収穫となった部分だと思います」


(広島アスリートマガジン2019年12月号から一部抜粋・続きは本誌にて掲載)


稲垣 祥( いながきしょう)
1991年12月25日生、東京都出身/175㎝、70㎏/MF。
帝京高、日体大で主将を経験し、14年にヴァンフォーレ甲府に入団。持久力を測定するテストでチームトップに輝くなど、スタミナ面では他の追随を許さない。17年にサンフレッチェ広島に完全移籍すると、初年度からJ1残留を決めるゴールを放つなど印象に残るプレーを残す。18年からボランチとしてレギュラーに定着。今季はケガで出遅れるもスタメンの座を奪い返した。