アジアリーグアイスホッケーH.C.栃木日光アイスバックスは通算成績19勝13敗、勝点54の3位で2シーズンぶりのプレーオフ進出を逃した。

H.C.栃木日光アイスバックスシーズンレビュー

 チーム発足25周年の節目のシーズン、藤澤悌史監督体制4期目はフィンランドからイェスパー・ヤロネン氏(通称・JJ)をコーチに迎え、新しい戦術に取り組んだ。自陣からパスを繋いで相手を崩すホッケーからパックを前線に放り込みチャンスを多くつくるシンプルなスタイルへの変化に、当初は選手から戸惑いの声も聞かれた。チームに強く求められたのは『規律』。選手のポジションニングはもちろん、スティックやスケートの向きも細かく指示される。さらにJJからはミドルドライブでは全力で走る、パス出しでは名前は呼ぶといった基本的なことから指導が飛んだ。

 その新しい戦術に手応えを感じたのはリーグ6試合目の横浜グリッツ戦。開幕から5試合で延長勝ちが2つ。中でもグリッツとの初戦となった5戦目は2対6と4点差の上、内容的にも完敗で、『3冠』を目標に掲げたチームに対して早くもファンからは厳しい声が上がった。一方で、規律にとらわれ『考えながら』のプレーでバランスを欠いていた選手たちはこの日のミーティングで自身が抱える疑問や不安、不満を話し合い、意思統一を図っていた。立ち上がり2分で2失点したものの、藤澤監督がタイムアウトで流れを切るとそこから息を吹き返し、終わってみれば古橋のハットトリックを筆頭に寺尾勇利、磯谷奏汰らが得点、守ってはGK大塚一佐が無失点で抑えて8対2で勝利した。古橋が「アイスバックスのFWの強みと自信を得た」と話すこの試合を境に、10月に4連勝、11月に3連勝とプレーオフに向けて戦いながら『アイスバックスらしいホッケー』の完成度を高めていく。

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 そして12月、目標のひとつである全日本選手権連覇まであとひとつとしたレッドイーグルスとの決勝。第1ピリオド16分に寺尾のゴールでアイスバックスが先制するも、逆転に次ぐ逆転で試合残り5分を切って3対4とリードを許す展開に。万事休すかと思われたが、残り34秒で古橋の劇的な同点弾で延長へ。そして最初の攻撃でドリブルで駈け上がる古橋の後を追った鈴木がゴール前に飛び込み、絶妙なタイミングで送り込まれたパックを叩き込んだ。歴史に残る大勝負とも言われた試合で勝利のヒーローの1人となった鈴木は大会後に「日光でなければ勝てなかった」と繰り返すほど、最後まで勝利を信じ声援を送り続けたファンと、劣勢になりかけてもそれを跳ね除け続けた選手の力で掴み取ったチーム創設初の全日本連覇だった。

 勢いそのままに3冠に向かいたいところだったが、12月後半のアニャン戦で2試合で合計17失点の大敗を喫すると、まるで自信を失くしたかのようにペナルティーやミスから失点を重ねる試合が続く。古橋は「3点以上の得点と2失点以内がアイスバックスが勝てる試合だが、後半はそれが難しかった」と言う。9月から続く長いシーズン、どのチームにも訪れる好不調の『波』。これをどう乗り切るかが上位進出への鍵となる。アイスバックスはこの『波』を制することが長年の課題のひとつだが、キャプテンの鈴木は「体力的なものより精神的なもの」と分析する。リーグ優勝の経験がなく気持ちのぶれが大きいとし、そのためには核となる選手も精神的な成長が求められると話す。

 それを象徴するのが最後までプレーオフ争いをしたイーグルとの対戦。ホーム開幕の2戦目は4点のリードから逆転負け、1月のアウェーでは1対0とリードして粘り強く試合を進めていたにも関わらず、残りわずか7秒で追いつかれPSSで敗戦。どちらもわずかな隙から勝利を取りこぼしたアイスバックスに対し、勝負どころで底力を見せたイーグルスがプレーオフに進出している。