新井貴浩氏と石原慶幸氏は、石原氏がカープに入団した2002年から公私にわたって付き合いが深い。新井氏のFA移籍で袂を分かつ形にはなったものの、その期間も二人で護摩行を続行。そんな多くの時間を共にした両者が、石原氏の引退に際して特別対談をおこなった。

長年カープで苦楽を共にした新井氏と石原氏。対談中は終始、笑顔が絶えなかった。

◆感動とサプライズの引退試合に感謝

─ 10月16日に引退会見をされ、11月7日に引退試合を迎えました。特別な感情があったのですか?

石原 何気にそんな感情はなかったですね。決断してから少し期間もあって自分の中でも気持ちを消化できていましたし、すっきりとした気持ちで引退試合を迎えていましたね。久しぶりにみんなと練習したり試合することが楽しみでしたね。

─ 試合前には藤川球児投手、能見篤史投手から花束贈呈がありました。

石原 うれしかったですね。球児とは2009年のWBCで一緒に戦いましたし、能見は数少ない同学年ですからね。そういう2人が出てきてくれたのはうれしかったです。始球式は娘2人が出てくれたんですけど、僕としてはボールをちゃんと離してくれて良かったなと。グズグズしちゃって投げないと試合が始まらないですから(笑)。ずっと「投げてって言ったら投げるんだよ」って言ってたんですよ。上の子が投げてくれたんですけど、練習のときに軸足を上げちゃったことがあったんで、それだけはやめてねと、ずっと指導していました(笑)。

─ 試合は8回守備からの出場でした。

石原 出る直前、僕はブルペンで受けていたんですけど、最初は誰と組むのか分からなかったんです。それで一緒に出ていく投手が中田廉だったんですけど、「イシさん僕ヤバいかもしれないです。ストライクが入らないかもしれないです」って言いながら、ブルペンで廉が泣き出して……それ俺が泣くとこだろ! って(笑)。でも、グラウンドに出たらみんながマウンドで待っててくれて、僕も聞いてなかったのでうれしかったですね。でも、いつもの定位置に立った瞬間には、なんとか廉に良い投球をさせてやりたいと、意外と冷静でしたね。

─ 見事に無失点で最後の守りを終え、直後には最後の打席を迎えました。

石原 まず、僕だけのために能見が投げてくれたというのはうれしかったですし、阪神ベンチの方々、能見に感謝しかないです。しかも全球ストレートを投げてくれましたし、本当に感謝だけです。思い残す事がないように、僕は思い切って振るだけでした。
新井 最後の守りは良い光景だな~という印象だったよね。総じてあの引退試合は試合前からセレモニーまで、いろいろなことがあって、すごく良い日だなと感じたよ。

─ 惜しくも試合は敗れてしまいましたが、最後の試合を終えてどんな心境でしたか?

石原 試合に出る前は『これでユニホームを着て、みんなと野球ができるのも最後か』と思っていましたが、出てからは『やばい、最後にセレモニーがあるな』と(苦笑)。ただ、試合は追う展開だったので、いつも通りに応援していました。