現役時代にバッテリーを組んでいたこともあり、長らく苦楽を共にした石原慶幸の引退は佐々岡真司監督にとっても特別なものだった。低迷期からチームを支え続けた正捕手を、どのような形で送り出すのがベストなのか。2020年11月7日の引退試合(阪神戦・マツダスタジアム)を迎えるにあたり、指揮官が当時抱いた思いを振り返る。

現役時代は石原慶幸氏とのバッテリーで勝ち星を重ねた佐々岡真司監督

◆再び指導者としてぜひカープに戻ってきてもらいたい

 石原という選手は、捕手としては本当にどっしりと構えていましたし、選手としての信頼も周囲から集めていました。それは金本知憲、新井貴浩というチームの中心野手を担ってきた選手たちの背中を見て育ったことも大いに関係しているでしょう。また、先輩たちから受け継いだものを、後輩たちにもしっかり教えていける選手でもありました。

 具体的には現在のチームリーダーである會澤翼に対して、しっかりとした教育を施してくれたと思っています。選手目線で、技術面のみならず精神面のアドバイスをしていました。その中でレギュラー争いをする上での高い壁として自らも選手として輝ける、そういう側面を見ても本当に素晴らしい選手だったと思います。

 最後に石原の引退試合(11月7日阪神戦・マツダスタジアム)ですが、あの日に至るまでに、どのような出場の仕方が石原の最後の花道を飾るにふさわしいか考えた末で、あのような(8回途中からの途中出場)起用の仕方になりました。今季は残念ながら優勝争いができませんでしたが、やはり最後は守って、打席に立ってほしいと考えていました。

 結果的に一番良いタイミングではなかったのかなと思います。走者が出たら、ぜひ盗塁をしかけてほしいと思いましたし、それを刺すところが見てみたいと思いましたが、それは叶いませんでしたね。

 もちろんバッテリーを組んだ中田廉もとてもプレッシャーがかかっていたと思いますが、なんとか無失点に終えることができて良かったと思います。もちろん石原自身、最後の試合として素晴らしいプレーを見せてくれたことで本当に良い引退試合になったと思います。

 実際に引退試合を見ていると、引退の報告を受けた時とはまた違った寂しさがこみ上げてきましたし、私自身の現役時代のことを思い出したりしていましたね。19年間、捕手として全うしたそのプロ野球人生は本当に素晴らしいものだったと思います。

 まずはゆっくりと体を休めてほしいですが、2021年からはプロ野球解説者としての道を歩むということで、今のカープを外側から見て気づいた点はすぐに教えてほしいですね。そしてゆくゆくはその経験を生かして、必ずもう一度ユニホームを着ることになる人物だと思っています。今のうちにしっかりと勉強して、再び指導者としてぜひカープに戻ってきてもらいたいですね。