今や日本を代表する捕手へと成長を遂げた、カープの正捕手・會澤翼。入団以来、石原慶幸という高い壁を目標として、常にプレーを続けてきた。ポジションを争うライバルでありながら、特別な関係性でもある2人。2020年限りでユニホームを脱ぎ、會澤自身が“良き兄貴分”と語る石原への熱い思いを聞いた。

石原慶幸氏と共に2016年からの3連覇を支えた會澤翼選手。

◆スタメン出場となった石原引退試合は特別な感情で臨んだ

 イシさん(石原慶幸)からは直接電話で「引退するわ」と引退の連絡をいただきました。最初に聞いたとき、僕としては率直に『あぁ、マジか……』という気持ちだったり、寂しさだったり……でしたね。連絡をいただいたときの会話は確か「本当ですか?」だったか、「お疲れ様でした」ということを言わせていただいたと思います。

 これまでいろいろな先輩方の引退を見てきましたが、イシさんとは多くの時間を過ごさせていただいただけに、たくさんの思い出があります。なので、なかなか言葉では言い表せないというか、特別な感情というか……とにかく寂しさしかありませんね。

 イシさんの引退試合、僕はスタメンマスクで出場しました。もちろん試合に入れば、いつも通りでしたけど、試合前のセレモニーなどもあって、最初は普段とは違った感情でしたよね。8回の守備からイシさんと交代しましたが、『現役としてユニホームを着ている姿を見るのも最後なんだな……』という風に思いながら見ていましたし、何度も言ってしまいますが、やっぱり寂しかったです。

 試合後、イシさんのスピーチ直後に花束を渡させていただきましたが、「あとは任せたぞ。頑張れよ」と声を掛けていただきました。やっぱりいろいろな事を思い出しましたし、イシさんとはユニホームを着ているとき以外でも一緒にいる時間も長かったですし……感極まってしまいました。

◆最初はすごく怖いイメージ。今は本当に良い兄貴分に

  振り返ってみれば、僕が高卒でカープに入団した2007年に初めて出会いましたが、当時イシさんはすでにチームを代表するキャッチャーでしたよね。年齢でいうと僕とは9歳離れていることもありますし、『雰囲気があるな、すごく怖いな』というイメージしかなかったです(苦笑)。

 最初に会話を交わさせていただいたのは確か、挨拶くらいでしたね。ちゃんとお話しさせてもらうようになったのは、2013、2014年あたりからです。その時期からご飯にも連れていっていただけるようになりました。

 同じポジションを争う大先輩ですが、僕としてはライバルというよりも『すごいな』という目でしか見ていませんでした。それはキャッチャーとしての技術もそうですし、試合に出続ける体の強さもすごいなと思っていました。僕が一軍に定着するようになって、イシさんが試合に出ているときは、やっぱりイシさんの姿を見ている時間が多かったですね。『キャッチャーとしてどういう振る舞いをしているんだろう?』だとか、『どういう動きをされているんだろう?』ということを常に考えながら、その姿を見ながら学ばせていただいていましたね。

(vol.2に続く)