地元球団であるカープで活躍した新井貴浩氏に、カープファンだった幼少期も含め、さまざまな思い出を語ってもらう本連載。今回はV奪還を目指す佐々岡真司監督について、現役時代の印象も交えながら語ってもらった。

現役時代は先発として100勝をマークし、ストッパーとしても100セーブを記録と、長年カープ投手陣を支えてきた佐々岡真司監督。

◆打ってよし守ってよし。現監督の現役時代

 読者のみなさんこんにちは! 新井貴浩です。今回は現役時代から大変お世話になっているカープの大先輩であり、現在監督を務められている佐々岡真司監督についてお話しさせていただこうと思います。

 佐々岡監督で印象的な名場面ですが……、たくさんありすぎて、一つに絞ることができません(笑)。まず、僕がプロ入り前にカープファンとして見ていた頃から、とにかく『すごいピッチャーだな』という目で見ていましたけど、ピッチングだけじゃなくてバッティングも良い選手だと思っていました。

 若い頃から先発、リリーフで活躍されていましたが、ルーキー時代にはサヨナラホームランを打ったこともあるんですよね。1991年に優勝したシーズンはプロ2年目にも関わらず最多勝を獲得されてMVPに輝き、優勝に貢献されています。少年時代の僕は『すごい野球センスを持った選手だ』とずっと思っていました。

 僕がプロ入りした時点でも佐々岡さんはカープのエースでしたけど、実際に見て、野球センスのすごさを持った人だという予想が確信に変わりました。例えるならば、新しい事を覚えるのに1理解すれば、5くらいできる人なんです。野球で言うなら、すぐに変化球をマスターすることができてしまうというイメージです。プロ野球の世界は野球センスを持った選手ばかりですが、その中でもズバ抜けたセンスの持ち主だったと思います。それに加え、ものすごい体力のある選手でした。だからこそ、あのような素晴らしい実績を残されたんだと納得させられました。

 大先輩で年も離れているのに、僕は若い頃から可愛がってもらっています。普通は野手と投手では練習時間帯が違いますし、可愛がっていただくことになったきっかけは、よく覚えていないんですけど、なぜか僕は「飯行くぞ」と誘ってもらっていました。

 野球も好きな方ですが、それと同じぐらい食べることも好きですよね。いろんな先輩、後輩と食事をしてきましたけど、僕が思う中ではナンバーワンです! 良い意味でザ・昭和なプロ野球選手です。たくさん食事に誘っていただきましたが、いつも僕らを楽しませてくれて、オンとオフの切り替えがすごく上手な人だと思います。

 そしてメディアでは良い人だと言われていますが、本当にその通りで優しい人です。ただ野球人として〝頑固な部分はすごく頑固〟で、良い意味でピッチャーらしい性格を持った人だと僕は思っています。

(part2に続く)