ピッチングの豪快さと異なり、野球について語れば理路整然としている。まだ18歳だが、着実に積み重ねた成長が言葉に反映されているかのようである。プロの世界のトレーニングにも、悲鳴をあげることこそないが、その学びに感嘆の声をあげることはある。

 

 「プロは全てが濃い内容です。トレーニングの一つひとつに意味があります。分からないことがあれば、トレーナーの方が丁寧に教えて下さいます。例えば、足を上げる動きでも、股関節を入れるような意識を持ってやることが大事です」

 186センチの長身、150キロの快速球、ポテンシャルの塊のような数字が並ぶが、鈴木寛人の成長曲線は実に地に足のついたものである。遠藤淳志を輩出するなど育成力に定評のある霞ケ浦高に入った決め手も、彼らしいものだった。

 「投手育成がうまいと聞きましたし、人間的にも成長できると思ったからです。挨拶や礼儀、こういうことを大事にすると周囲から聞いていました」

 高校入学当初は体重70キロと細身だった。まず、ここから取り組んだ。

 「朝食、2時間目の休み時間、昼食、練習前、夕食、夜食、1日6食でした」

 体重は着実に増え、それが球威に好影響をもたらすようになった。

 「大きくなると球の勢いが変わって、ファウルが奪えるようになりました。そうするとカウントが有利に進むので、甘く入っても痛打されることが少なくなりました」