スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 4月15日現在、カープは8勝8敗1分けで、首位・阪神から4.5ゲーム差の4位。たら・ればの話をしても仕方ないが、もし、ジェリー・サンズとジェフリー・マルテがカープにいたら、この順位は逆になっていたのではないか。

 2人の成績はサンズが打率2割9分1厘、5本塁打、15打点。マルテが2割5分、2本塁打、7打点。一方のカープは出場登録を抹消されているケビン・クロンが1割9分2厘、1本塁打、1打点。もうひとりのアレハンドロ・メヒアが0割6分3厘、0本塁打、0打点。とても“助っ人”と呼べるような成績ではない。

 チーム打率こそ2割4分5厘(リーグ3位タイ)と悪くはないが、一試合あたりの平均得点は中日に次いで下から2番目の2.76。「頼りになる外国人がいたら……」と嘆かざるを得ない。

 しかし、「頼りになる外国人」がいないから勝てないというわけではない。1991年のペナントレースがそうだ。山本浩二政権下のこの年、カープは2位・中日に3ゲーム差をつけて優勝するのだが、2割5分4厘というチーム打率はリーグ4位、ホームラン数88本はリーグ5位。

 弱い打線を支えたのが、リーグ1位の防御率(3.23)をマークした強力投手陣。わけてもMVPに輝いた現監督・佐々岡真司の活躍が光った。

 この年の外国人はロデリック・アレンとタイ・バンバークレオの2人。ホームラン数は、2人合わせて11本(アレン9本、バークレオ2本)。山本監督は「外国人が頼りにならんのやったら勝負強い選手を使う」と言って、後半には“代打屋”だった西田真二を4番に起用し、糊口を凌いだのである。西田は「オレはRBI(打点)屋だ」とチャンスでの一振りにかけていた。

 91年の西田の役割が担えるのは松山竜平だと期待していたが、コンディション不良を理由に登録を抹消され、現在は3軍で調整中。となると、頼りになるのは進境著しい坂倉将吾か。5番もすっかり板についてきた。ビッグシーズンにして欲しい。

(広島アスリートアプリにて2021年4月19日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。