◆新人王から豪腕セットアッパーへ

 1964年から『16』を背負ったのは安仁屋宗八。安仁屋について監督・コーチ時代の経歴は背番号『88』の項で触れたが、彼が入団時から阪神に移籍するまでカープでの現役時代を共に過ごしたのが『16』だった。まだ日本返還前だった沖縄から初のプロ野球選手となった安仁屋は、1968年にはカープ在籍時では最高の57試合に登板。23勝を挙げてチーム初のクラスA入りに貢献した。

 その後、1986年からの長冨浩志、1994年からの山内泰幸と、ドラフト1位入団→新人王獲得というエリートコースを歩む投手が続く。まず、社会人野球を経て1985年ドラフトで1位指名された長冨は、初年度から即戦力として活躍。150キロを超える速球を武器に、8月以降は先発ローテーションにも入り、この年は計30試合に登板。10勝2敗2セーブ、防御率3.04という成績で新人王を獲得した。

 長冨が1994年限りで日ハムにトレード移籍すると、『16』は球団初の逆指名選手として入団した山内に引き継がれた。山内は開幕早々の4月11日にプロ初登板初先発で勝利を挙げてみせたが、その後は中継ぎに転向。これが高評価を得て6月には先発に復帰。34試合で14勝10敗、防御率3.03という成績で、カープからは長冨以来9年ぶりの新人王となった。

 山内は負傷にも悩まされ、8年間のプレーの後2002年限りで引退。その山内以来、ドラフト1位で『16』をつけ、現在もプレーを続けるのが今村猛だ。清峰高でセンバツに優勝し、2009年のドラフトを経て入団。カープの高卒新人としては最高額の年俸で契約した。

 プロ初勝利を挙げた2年目の2011年にはセットアッパーとして起用されるようになり、2012年には29試合連続無失点の球団新記録を達成するなど活躍。一時不調もあったが、2016年には復活を果たし、25年ぶりの優勝にも貢献。日本シリーズでは6戦全部に登板し、シリーズ最多の4ホールドを挙げた。そこからのリーグ3連覇にも欠かせない存在となった。

 2018年以降は再び不調の時期が続いているが、ファンは豪腕セットアッパーの復活を待っている。はたして再び背番号『16』がマウンド上で躍る日はいつになるのだろうか。

【背番号『16』を背負った主なカープ選手】
備前喜夫(投手/1957年-1962年)
安仁屋宗八(投手/1964年-1974年)
長冨浩志(投手/1986年-1994年)
山内泰幸(投手/1995年-2002年)
今村猛(投手/2010年-)
※初めて背番号を付けたシーズンのポジションを表記。