プロ野球界で生き抜くことができる選手たちには、必ずそれだけの理由がある。競争に勝ち抜くための考え方、真摯に取り組む姿勢、敵を圧倒する技術、球種は必ず自らを助けるものとなる。はたして赤いユニホームを着た男たちは、どのような武器を持っていたのだろうか。
◆終盤の守備固め。強力内野陣を補完する存在
二遊間には正田耕三、野村謙二郎。三塁には山崎隆造、そして江藤智。リーグを代表する内野陣を誇った1990年代カープにあって、高信二は歩むべき道を見いだした。
「自分が生きていくためには、守備をおろそかにしてはいけない」
抜群の攻撃力を誇るレギュラー陣に付け入るスキはなかったが、その選手たちの弱点を補いチームの総合力を高める存在として、自らの役割を設定した。
主にサードとショートを専門とし、その堅実な守備で首脳陣の信頼を得た。その裏には、いつ何時でも真摯に野球に取り組む姿勢があった。
「練習のときの心構えが一番大事だった。練習で緊張しておけば、試合にはいつもの精神状態で臨むことができる」
突出した能力を持っていたわけではない。ただ、個性派揃いのチームだからこそ、野球に対する真摯な姿勢が際立っていた。
「打撃だと10回のうち7回の失敗は許されるが、守備はどんな状況でも100%の結果を残さなければならない。試合で集中するのは当然として、練習から高い意識でやらないとダメだと思っていました」
引退した翌年からコーチに就任し、今季は二軍監督として後進の指導に当たっている。プロで生き抜く武器となった『守備力』を磨いた心構えは、カープの良き伝統として現在も選手たちの間に脈々と受け継がれている。
高信二●こうしんじ
1967年4月16日生、福岡県出身。右投左打。東筑高-広島(1986年ドラフト2位)。668試合に出場、打率.235、3本塁打47打点。堅実な内野守備はチームでもトップクラスの技術を誇り、終盤の重要な局面での守備固めとして歴代監督に重用された。実直な人柄は折り紙付きで、現在もコーチングスタッフに名を連ねチームを支え続けている。