「野球は投手」と言われるほど、試合展開の主導権を握っているのが先発投手だ。はたしてプロの世界で先発として生き残るためには何が必要となるのか。ここでは現役時代に213勝(歴代19位)をマークした北別府学氏が、かつて語った“先発投手論”を一部再録する。
(『広島アスリートマガジン』2011年8月号掲載)

針の穴を通す制球力で、11年連続で二桁勝利をマークした北別府学氏。

◆勝負どころを見極める能力が必要

 投手の分業制だけではなく、変化球の多様化や打者の技術向上など野球は進化した。私が現役のころは相手の中軸を抑えればある程度、試合をつくる計算はできたが、今の野球ではそうはいかない。

 打者の技術向上や道具の品質向上もあって、どの打順でも気を抜けなくなっている。警戒を強める打者が増えれば球数も自然と増す。全ての打者を警戒すれば不用意な一球は減るだろうが、疲労度も同時に増す。

 力を入れるべきポイントと、そうでないところ。長い回を投げる先発投手ならば、勝負どころを見極める能力も必要である。分かりやすいのがイニングの先頭打者。私も現役時代に強く意識していたし、その点は昔も今も変わらないだろう。

 先発は中継ぎと違い一人の打者との対戦が一度ではないため、1試合を通じたプランが必要になる。長い回を投げるための工夫として、カーブのような抜く球種を覚えることが必要になるだろう。

 1イニングだけの中継ぎであれば10球速いストレートを続けても抑えられるかもしれないが、打者との対戦が2、3巡する先発は、いくら速いストレートがあってもそれだけで抑えることはできない。160キロの球を投げようとするのではなく、140キロ台の球をいかに160キロに見せるかを考えることの方が大切だ。それは技巧派投手だけではなく速球派投手にも言えることで、全て自分を楽にさせることにつながる。