春季キャンプ初日から他の選手と同じ練習メニューを消化した田中広輔選手。

リーグ3連覇中のカープ打線の特徴として、まず挙げられるのが上位打線の固定化だった。“タナキクマル”の呼称が根付いたように、当時は1番から3番まで田中広輔、菊池涼介、丸佳浩(現巨人)を不動の並びとして聖域化。結果、チャンスメークはもちろんのこと、得点も奪える強力上位打線として他球団を震え上がらせることに成功した。

ところが2019年、丸佳浩のFA移籍で3番が空位になると、圧倒的な破壊力を誇ったカープ打線に一気に綻びが見え始めた。チーム打率は2割5分台(3連覇中の平均は2割6分9厘)に下降し、得点も3連覇中の平均から123点も減少。全体の出塁率も3割4分後半から3割2分台にまで落ち込んだ。

その要因の一つとして考えられるのが、やはり不動のリードオフマンとしてチームを牽引してきた田中広輔の不調だろう。これまで出塁率で3割を切ることはなかったが、昨季はプロ6年目にして初めて2割6分台に沈んだ。17年に最高出塁率のタイトルを獲得した田中の不調は、明らかに昨季のカープ打線のブレーキとなっていた。

ちなみに2番の菊池涼介は、過去8シーズンで6度、犠打でリーグトップの数字を弾き出している。1番が出塁し、2番が犠打で送って、3番以降のクリーンアップが塁上を掃除する。首脳陣が意図する戦略をグラウンド上で体現することで、カープは他チームを圧倒する攻撃力を生み出してきた。再び破壊力のある打線を形成する上で、やはり高い出塁率を誇った実績を持つ田中の復調は欠かせない。

いずれにせよ1番、2番の出塁率が、今季のチーム状況を左右する大きな要因となる可能性は高い。3月20日のシーズン開幕に向けて、佐々岡新監督ははたして誰をリードオフマンに指名するのか? “タナキク”コンビが3連覇中のように機能するならば、得点力アップの可能性は上がるはずだ。