チーム打率はそれほど悪くないものの、今季のカープは得点不足が顕著となっている。39試合を消化しての得点119は、中日の111に次いでリーグ5位(5月17日現在)。その要因の一つとなっているのが、クリーンアップの低迷だ。

 菊池涼介、小園海斗らが離脱するなか、主軸にも当たりが戻らないとなればチームの情勢はひっ迫する。ここでは4番として昭和黄金期を支えた“ミスター赤ヘル”山本浩二氏の『4番論』を2日間にわたり再録する。
(『広島アスリートマガジン』2018年8月号掲載)

指揮官時代に新井貴浩氏を鍛え上げた山本浩二元監督。

◆自分の成績ではなくチームの成績が一番

 4番打者というのは、やはり打線の中心を打つわけですから、責任というものがあります。私が初めて4番を打ったのは初優勝前でしたが、最初の頃はどうしても緊張する部分がありました。

 初優勝した1975年に4番に定着しましたが、やはり他の打順とは全く違う感覚でした。そこから良い意味で4番という打順に慣れていき、自分の中でも自信がついていきました。

 また、優勝をした感激と喜びを経験したことで、『もう一回優勝したい』という思いが芽生えて、4番として自分の成績が一番ではなく、チームの成績が一番という考えでプレーするようになりました。

 現役時代、長く4番を任されてきましたが、常に勝敗の責任を感じていたし、打つに越したことはありませんが、『自分が打てなくてもチームが勝てば良い』という思いを持って戦ってきました。また打線の中心ですから、チームリーダーとしての役割も求められます。それだけに、4番としての立ち居振る舞いにも気を配っていました。