2016年ドラフト1位の豪腕・矢崎拓也が5月28日のロッテ戦で、2017年5月5日の阪神戦以来、4年ぶりとなる先発登板を果たす。現在、カープはコロナ禍の影響で先発の九里亜蓮、高橋昂也、森下暢仁が戦線離脱。異常事態に見舞われるなか、ウエスタン・リーグで先発ローテーションを守っていた矢崎に白羽の矢が立てられた。

2017年シーズンが始まる前のワンショット。ロッテ戦で座右の銘を体現したいところだ。

 “ドラ1”の名の通り、デビュー戦は衝撃的だった。プロ初登板となった2017年4月7日のヤクルト戦では、9回途中までノーヒットノーランの快投を披露。最速153キロの剛球と落差のあるフォークボールでヤクルト打線を翻弄し、プロ初勝利をマークした。

 だが、以降は先発としてマウンドを任されながらも、四球の多さから球数を増やし失点を重ねていった。なかなか状態は上向かず、2度の登録抹消も経験。抹消直後には、自らの投球に迷いが生じていることも告白している。

「どこが原因でこうなっているのかが自分でもいまいち理解しきれていない部分があります。堂々巡りをしながら、もがいている感じですね。具体的にどうやって直すのかという段階で迷っています」(『広島アスリートマガジン』2017年8月号)

 7月1日に行われた紅白戦でも四球を連発し、シーズンオフには投球時の体のばらつきを減らすためにフォーム改造にも着手。キャンプ初日から精力的にブルペン入りし、着実にステップアップを図っていった。

 ところが『加藤』から『矢崎』に登録名が変わった2018年は、思いとは裏腹に一軍登板はなし。3年目もわずか6試合の登板で、防御率は9点台に沈んでしまった。その上で今季は背番号『13』をドラフト2位の森浦大輔に譲るなど、厳しい状況に追い込まれている。

 それだけに今回のロッテ戦は、矢崎にとって千載一遇のチャンスとなる。これまでドラ1右腕がプロで記録した勝利は、わずかに『1』。今宵の先発マウンドではデビュー戦を彷彿とさせるような、相手打線を圧倒する快投が望まれている。