4月3日から始まった17連戦を、4勝6分7敗(リーグ戦:3勝5分5敗、ルヴァン杯:1勝1分2敗)の成績でフィニッシュしたサンフレッチェ広島。ここでは、サンフレOBの吉田安孝氏が、5月8日の鳥栖戦で、J1通算400試合出場を果たした青山敏弘がチームにもたらす影響力について、青山のエピソードと共に紹介する。

広島一筋18年目の青山が、史上26人目となるJ1通算400試合出場を達成した。

◆史上26人目の快挙。青山敏弘がJ1通算400試合に出場

 若手選手を中心に試合が回るようになってきたことは感じますが、その中でもやはり青山の存在感は際立っています。5月1日の神戸戦では前半で3点を失ってしまいましたが、そういう状況になると、選手は足元に意識をとられがちになるものです。ただ、青山は常に縦を意識してプレーしていました。とにかくボールを持ったら何度も何度も、攻撃のメッセージを込めた縦パスを送っていました。

 しかし、縦に対するほかの選手の意識がまだ薄く、ミスをしたり、ギアが下がったのは残念なポイントです。この動きを選手が共通理解できるようになれば、アタッキングサードで連携が生まれるでしょうし、縦パスへの意識、攻撃のスイッチ、裏のスペースへの走りなどができるようになり、サントスも活きてくると思います。点を奪うためには、とにかくサントスをどううまく使うかが課題です。それに加えていろんなタイプの選手が揃っていますから、各々が特徴を出し、変幻自在の攻撃を仕掛けていくのが理想ですね。

 また、青山は5月8日の鳥栖戦でJ1通算400試合出場を果たしました。これまで数々のケガに見舞われ、見ているこちらも辛くなるようなことがたくさんありましたが、その度に不屈の精神で這い上がってきました。そして戻ってくる時には、ケガをする前の青山よりグレードアップして帰ってきてくれました。プレーヤーとしてはもちろん、人間的にも本当にすごい存在です。そういう選手がサンフレッチェにずっといて、ピッチに君臨している。青山の存在はサンフレッチェにとって大きな強みになっていると思います。

 青山のサッカーへの情熱を表す印象的なエピソードがあります。彼の出身校である作陽高サッカー部の野村雅之監督は、高校の同級生なんですが、その野村監督から聞いた話です。プロ入り後もサッカー部の練習に顔を出していた青山が、ある日、大雨の中で現役の高校生と一緒にトレーニングをしていたそうなんです。その姿がとにかく真剣で、土のグラウンドで泥んこになりながら、スライディングもガンガンやっていたそうです。その青山の姿に高校の生徒達は刺激を受け、チームの意識が上がったと野村監督から聞きました。なんだか青山らしいエピソードだと、話を聞いたときに思いましたね。