2001年ドラフト4巡目でカープに入団し、捕手として活躍した石原慶幸氏。25年ぶりの優勝、球団初のリーグ3連覇。記憶に新しい節目の瞬間には、正捕手・石原氏の姿があった。カープ一筋19年のプロ野球人生。悔しさも歓喜も知り尽くした名捕手の野球人生を、数回にわたり石原氏の言葉で振り返っていく。

当初はあまり交流のなかった石原と會澤翼だが、カープの未来を背負うべき選手であると考えコミュニケーションを取り始めた。少しずつ距離感も縮まり、同じ捕手として多くの苦楽を共にした。

 FA権を取得した2010年にあった出来事として印象深いのは、マエケンこと前田健太(現・ツインズ)と26試合バッテリーを組み、最優秀バッテリー賞を獲得したことです。

 マエケンは入団当初から、投げればどれも良い球で、牽制やバント処理もうまい。バットを持たせればホームランも狙える打撃センスを持ち合わせていました。年々成長していく姿を見て、こんな選手がいるんだと驚かされたものです。

 マエケンとは、バッターの反応などを見ながらよく話し合いをしました。投手との会話はどんなものでも勉強になりますが、マエケンとの会話はレベルの高い内容が多く、捕手としての引き出しを増やすことができました。ちなみにマエケンとは、2013年にも二度目となる最優秀バッテリー賞を受賞することができました。

 そして會澤翼との仲が深まったのもこの頃からでした。強い意思を持ってグラウンドでプレーをする彼を見て、これからのカープにはこの選手が必要だと思い、食事に誘うことにしました。

 この頃の僕は、自分ではそんなつもりはなかったのですが、かなり後輩から怖がられていた存在だったようです。ちなみに會澤は、この時、僕に怒られるのではないかと恐れていたようです(苦笑)。

 初めての食事では「何の隠し事もなしに言うよ」と會澤に伝え、本音でたくさん話をしました。會澤が成長すればチームにとってもプラスになると思い、「二番手を目指したら、そこまでの選手になる。だから一番手を目指せよ」など、さまざまなアドバイスを送りました。

 結果的に會澤とは、この日を境にして、よく一緒に食事に行くようになりました。會澤のおかげで、今まで関係を持つことがあまりなかった野手陣とも仲が深まり、その関係性は、後に僕がチームをまとめていく際に役立ちました。