スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 3年後に迫った2024年パリ五輪で残念ながら野球は実施競技から漏れた。2028年五輪は、開催地が野球の盛んなロサンゼルスだから、「実施競技として復活するのではないか……」(JOC関係者)との声もあるが、これも保証の限りではない。

 そう考えると、今回の東京五輪が日本野球界にとっては「最初で最後の金メダル」となるかもしれないのだ。

 野球が五輪の実施競技になったのは92年バルセロナ五輪から。この時は銅メダル。96年アトランタ五輪=銀メダル。2000年シドニー五輪=4位。04アテネ五輪=銅メダル。08年北京五輪=4位。このように金メダルは一度もないのだ。

 84年ロサンゼルス五輪では松永怜一監督の下、金メダルをとっているが、この時はまだ公開競技だった。

 その意味で24名からなる侍ジャパンのメンバーは、大変なミッションを託されたことになる。24名のうち4名がカープの選手だ。

 名前を記そう。森下暢仁、栗林良吏、菊池涼介、鈴木誠也。特に注目しているのがルーキーの栗林である。ここまで(6月24日現在)26試合に登板して1敗14セーブ、防御率0.70。22試合という球団新となる開幕からの連続無失点記録もつくった。数字だけ見れば選ばれて当然の内容だ。

 実は24名のメンバー中、社会人出身選手は栗林と内野手の源田壮亮(埼玉西武)の2人しかいない。ピッチャーは栗林ひとりだけだ。

 侍ジャパンの強化本部長を務める山中正竹は、92年バルセロナ五輪の代表監督でもある。大学、社会人の監督も経験しており、かねて「日本野球の発展のためには、アマの底上げと団結が必要」と語っていた。00年シドニー五輪でプロが参加するまで、代表チームの主力は社会人選手だった。

 その意味で栗林と源田の選出は、社会人でプレーしている選手にとっても励みになるのではないか。ぜひ金メダルを持ち帰ってきてもらいたい。

(広島アスリートアプリにて2021年6月28日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。