◆将来は指導者としての潤滑油の役割に就くことに期待

 石原さんが貢献してきた役割について改めて振り返ると、人と人の間の隙間を埋める潤滑油のような存在だったのではないかと想像される。

 カープは2016年からセ・リーグ3連覇を果たした。

 そのときの要因は、田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、鈴木誠也といった若い野手陣に、大瀬良大地、野村祐輔、クリス・ジョンソンなどによる強力な先発投手陣、中﨑翔太や今村猛などタフなブルペン陣といった戦力の充実にあったことは疑いの余地はない。

 しかし、元々関わりの深かった黒田博樹、新井貴浩の両先輩や、後を託す格好になった會澤翼との関係も含めて、石原さんがカープの中で程よい位置に立ち、チーム全体のバランスを保ったことも、一因であったと思わずにはいられない。

 こうした人に対する配慮は、始めたばかりの解説者の仕事でも強みになると思う。だがやはり、再びチームの中に入り、今度は指導者として潤滑油となり、その効果を発揮するところを見てみたい。

 カープ一筋19年。石原慶幸さんのプロ野球人生で培われた独自のコミュニケーション術が真の意味で発揮されるのは、むしろ、これからだと期待している。

◆著者プロフィール
キビタキビオ
1971年生まれ、東京都出身。2003年に『野球小僧』(白夜書房)にて、野球のプレーをストップウオッチで計測・分析する「炎のストップウオッチャー」でライターデビュー。同誌の編集部員となり約9年務めたあと、2012年春からフリーとなり、雑誌記事の取材・執筆や書籍の編集協力・構成等に携わる。『野球人生を変えたたった一つの勇気~18・44mのその先に』(石原慶幸/サンフィールド)では構成を担当。『球辞苑』(NHKーBS)などのテレビ番組やイベントにも出演する。

◆書籍紹介
石原慶幸著『野球人生を変えた たった1つの勇気〜18.44mのその先に〜』(サンフィールド)
元広島東洋カープ・石原慶幸さん初の著書。野球を始めた幼少期から、高校・大学時代、そして広島東洋カープでプレーした19年間を軸に、捕手として生きてきた“石原氏独自のコミュニケーション”をコンセプトとした1冊。野球観を変える転機となったマーティー・ブラウン監督との対話、カープ低迷期の苦悩からリーグ3連覇までの舞台裏、さらに石原氏のキャリアで大きな影響を与えた黒田博樹氏、新井貴浩氏との秘蔵エピソードなど、これまで明かされることのなかった石原氏の思いも注目。