カープの捕手として19年間活躍し、2016年からリーグ3連覇にも大きく貢献した石原慶幸氏。本稿は、石原氏初の著書『野球人生を変えた たった1つの勇気〜18.44mのその先に〜』の構成を担当したスポーツライター・キビタキビオ氏が、前回まで石原氏独自のコミュニケーション術に迫ってきた。最終回となる今回は、制作の中で見えた石原氏の素顔を語っていく。

現在はプロ野球解説者として活躍する石原慶幸氏。

◆穏やかに気さくに、周囲に心地よい雰囲気を生み出す

 石原慶幸さん初の著書『野球人生を変えたたった一つの勇気 ~18.44mのその先に』の構成担当として、編集に協力させてもらった。

 グラウンドにいた頃、外から見ていたときとは、また違った雰囲気に思えたときもあった石原さん。最終回として、そのときに感じた人となりについて紹介したいと思う。

 制作の過程において石原さんは終始、時間を惜しむことなくやりとりに対応してくれた。

 基本的には気さくに。ときには笑いあり、それでいて、要所では真顔で話す。長い時間やりとりをする機会も多かったが、石原さんの口調はずっと穏やかで、時の流れを感じさせなかった。

 私たちは思い出深いエピソードを引き出さなくてはいけない立場にある。だが、石原さんは、概ね自分自身で記憶をめぐらせ、物語になり得る情報にたどり着き、示してくれていた。

 こうした雰囲気づくりは、現役時代にカープの投手をリードしていたときのスタイルにつながるものがあるかもしれない。いつの間にやら、こちらが投手となっていて、気持ち良くボールの出し入れをさせてもらっている。そんな心地よさがあった。