プロ1年目、2013年9月14日の巨人戦でプロ初打席に臨む鈴木誠也選手。

 結果を求めるあまり、打席内で気持ちは逸るばかりだった。「打ちたい」という気持ちが力みを生み、自分のスイングができなくなるという悪循環。そんなとき折れそうな心をつなぎ止めたのが、欠かさず続けた日々の猛練習からくる自信だった。

「『あいつは口だけ』って思われるのも嫌だし、自分にさえ勝てれば絶対に成功するって思っています。自分にさえ負けなければ何とかなるって思っています。二軍のときも打てないときは、体がきつくても休まなかった。きついから練習をしないっていうのは違うと思うし、きついながらも練習していたら結果が出てきていたので、そういう面では自信になっている部分もあるんです。少しでも野球に携わる時間を長くすれば、人よりも野球のことを考えていられるし、プロの世界はやったもん勝ちだって思っています。その日の試合で打てたら何もしない、打てなかったら練習するっていう選手にはなりたくないんです」

 学生時代から能力の高さは折り紙つきだった。とはいえ、プロ入り直後の自己評価は周囲が思うほどは高くない。それどころか“同学年のスター選手”との間には、確実に差が存在することを自覚していたという。

「たとえば大谷(翔平・当時日本ハム)くんや藤浪(晋太郎・阪神)くんは、高校生のときから注目されていた選手だったし活躍して当たり前というか。あの二人は天才バッターとか、天才ピッチャーなのかなって思います。でも自分はそうじゃないし、天才じゃない。努力してやらないといけない。天才だったら3月の時点で壁に当たらず、バンバン打っていると思うんです。でも、それが無理だった時点で天才じゃないと思うし、練習しないとダメなんだって思って。そうしたら良い結果が出てきたんで、改めてそういう努力の選手なんだなって思いました」