ルーキーイヤーの2013年。プロ初ヒット、初打点、初スタメンを記録するなど、端から見れば順調な1年目を送ったかに見えた鈴木誠也。しかし、シーズンを終えて彼自身の目に映っていたものは“1年目の成果”ではなく、“その先の未来”だった。この現状に満足しないストイックな姿勢、他を圧倒する意識の高さが、数年後に彼を唯一無二の存在へと押し上げた。当時19歳、プロ1年目を終えた直後のインタビューでは、改めて感じたプロの壁について語っていた。
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鈴木誠也のプロ1年目は、高卒新人野手としては順調そのものだった。春季キャンプで1日限定とはいえ一軍帯同を勝ち取り、シーズン終盤には11試合ながら一軍公式戦にも出場。同期入団選手より一足先に、初年度から貴重な経験を積み重ねていた。しかし、本人の中に残ったものは充実感ではなく、どちらかと言えば挫折感にも似た苦い気持ちだったという。
「今まで勉強もほとんどせず、ただ野球にだけ打ち込んできたので、野球だけはしっかりやらないといけないという思いでやってきました。でも、プロに入ってみて自分が考えているよりもすごい世界だったというか、高校生のときはまだ未熟で『プロに入ってもどうせ打てるんだろうな』っていう気持ちでいたんです。それが3月にシーズン入って『早く一軍に上がらなきゃ』って焦ってもいたし、本物のプロ野球選手が本気を出して、二軍といえどもすごい選手たちが多かったので……。それで最初の壁にぶつかって。打てないし結果も出ないし、考えてはイライラしてという悪循環だったんです」
鈴木の野球に対する意識の高さは、ルーキーイヤーから別格だ。高卒新人野手で一軍昇格を果たしたのは、99年の東出輝裕(現二軍打撃コーチ)以来。そして昇格するだけではなく初ヒット、初打点、初スタメンも記録した。これを“壁にぶつかった”と表現する選手は、そうはいないだろう。
「二軍のときは『打てる、打てる』と思って打席に入っていたんですけど、一軍のときはどうしても『打ちたい』、『結果を出したい』っていうことばかりが頭にあって、全部がバラバラな状態になってしまいました」