野球を楽しんでいる姿を見せていきたい

─今季から背番号が51から1に変更となりましたが、改めてどんな心境ですか?

 「カープの背番号1と言えば、やはり特別な番号だと思うので、そういう意味でもありがたいことだと思っています。ですが、それで自分の何かが大きく変わるということはあまりないですね」

─4番打者として3年目のシーズンとなりますが、4番打者としての思いは年々変わってきていますか?

 「特にそこは変わることはありません。4番を打っていて試合に負ければ『4番が打たないから負けた』と言われますし、そこだけじゃないですかね。それは慣れたので、いくらでも言ってもらって良いです。ただ、そういう部分に惑わされて野球が楽しくなくなるのは嫌ですね。極端な話になってしまいますけど、僕自身は毎日楽しく試合をして、自分の野球を楽しんでいる姿を見せられたら、それが良いかなと思っています。なので、世間のそういう声には惑わされないようにしていきたいですね」

─今年の8月で25歳になります。年下の後輩選手も増えてきましたが、その点に関してはどのような思いですか?

 「今まであまり意識することはなかったんですけど、結構後輩選手のことは『大丈夫かな?』と気になるようになってきましたね。僕もそんなことを言ってる場合じゃないんですけど、僕よりも年下の選手がなかなか出てきていないので気になりますね。僕が一軍に出始めたのが20、21歳くらいでしたが、今で言うと坂倉(将吾)だったり、二軍で頑張っている選手もそうですけど、もう少し出てこないといけないのかなと思っています。悩んでいるのであれば、技術面のことはあまりこっちが勝手に言えることではないですけど、『どういうこと考えてるの?』くらいは、いろいろ聞いたりするようにしています」

─年下の選手にはどんなことを伝えていきたいと思っていますか?

 「僕も一軍に出始めた頃、今の後輩選手と同じように悩むことがありました。それで悩んでいることがあれば、僕の場合はどうやって解決したのかを伝えられると思います。僕が20歳くらいの頃は自分で考えて、こういう風にやっていたという経験があります。いろんな引き出しというのは、人よりも考えてきたつもりだったので、そういうことを後輩の選手にヒントとして言ってあげるというのは近道になると思うので、ちょっとずつ伝えるようにしています」

─2020年は鈴木選手の地元でもある東京で五輪が開催されます。ここに向けての思いは強いですか?

 「もちろん出てみたい思いがあります。アメリカやドミニカやメキシコだったり、他国は普通にメンバーを集めればとんでもないチームになりますからね。そういう意味では一昨年に僕はWBCを経験させていただきましたけど、世界のトップレベルの選手が相手チームに多かったので、対戦していて楽しかったですし、本当に勝ちたいと思いました。そういう中でガチの勝負をやってみたいという気持ちはあります」

─最後に今季はどんなシーズンにしていきたいですか?

 「もちろん自分の成績は良いに越したことはないんですけど、それよりも勝たないとそれも評価されないですし、勝たないと4番打者としても評価されないと思います。なので勝てれば良いですね。自己満足だけはしたくないですし、みんなで勝って喜んでいる方が一番ですし、それが野球の楽しさだと思っています。個人の成績に走ること、それも大事なことだと思うんですけど、僕の楽しみ方はそうではないですし、そこに価値を見出しているわけではないので。当然優勝した上でタイトルが獲れれば一番良いですけど、初めからタイトルを狙って自分のことばかり考えるというのは僕の野球じゃないと思うので、とにかくケガがなく勝てれば良いと思います」

◆2013年から2020年に行った鈴木誠也のインタビューは、広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」で公開中。