東京五輪による中断期間に入ったサンフレッチェ広島。ここまでのリーグ戦を7勝9分6敗で終え、順位は9位。勝負の後半戦に向けた展望をOBの吉田安孝氏に聞いた。

7月3日の鳥栖戦でゴールを決めたジュニオール サントス選手。

◆天皇杯の屈辱を晴らしたリーグ戦の戦い

 ここ1カ月の試合を振り返ったとき、衝撃的だったのは6月16日のおこしやす京都ACとの天皇杯2回戦でしょう。5つ下のカテゴリーのチームに1ー5で惨敗するとは本当に驚きました。

 もはやこれは、ジャイアントキリングという言葉で片付けてはいけないレベルです。というのも、広島のプレーが良くなかったのは大きな反省点ですが、なによりも相手のプレーが素晴らしかったからです。5つ下のカテゴリーのチームで、ここまでのサッカーができるなんて数年前なら絶対にありえなかったと思います。全国に、おこしやす京都ACのようなチームがたくさんあって、それぞれのカテゴリーで切磋琢磨して上を目指していることを実感すると共に、日本のサッカーの変化を感じました。

 トップカテゴリーの広島が5点も取られて負けていてはいけないですが、日本のサッカーのレベルが底上げされているのは素晴らしいことです。試合後の観客席からの拍手は、不甲斐ない結果に対してブーイングの気持ちを込めつつ、相手チームを称えたものだったと思います。おこしやす京都ACは本当に良いチームでした。

 ただ天皇杯後に行われた6月19日の柏戦(○1ー0)と7月3日の鳥栖戦(△1ー1)。この2試合は、絶対に勝つという選手たちの気持ちが強く出た試合でした。柏戦は、前半で16本ものシュートを放ち、相手にプレッシャーを与え続けました。しかし、攻めても攻めても点が入らない。そんな難しい展開の中でやっとゴールをこじ開けることができました。勝利への執念でもぎ取った1点のようにも感じましたね。

 鳥栖戦は、川辺を勝利で送り出したいという気持ちが前面に出ていて、序盤からチャンスの多い展開でした。やはり、選手の思い入れが強い試合は観ていて面白いですね。それだけに、アディショナルタイムで1点を返されて勝ち点3を逃したのは残念でした。2試合ともチャンスを多くつくれているわりに、とにかく得点が取れていません。シュートを打った瞬間にふかしたりするシーンも多く、フィニッシュの精度が足りていないと感じました。勝つためには2点目を取ること、そして最後まで無失点で逃げ切ることが必要です。攻守にわたり反省すべき点が浮き彫りになった2試合でした。