東京五輪の野球競技は、いよいよ明日7月28日(水)に開幕する。豊富な国際大会経験を持つ菊池涼介に求められるのは、攻守ともに『フレキシブル』な働き。守備の名手が夢の舞台に挑む。

カープ・菊池涼介選手。

◆堅実・華麗なプレー。超絶守備でも魅せる

 WBCやプレミア12にも出場している侍ジャパン常連の菊池涼介が、東京五輪でもメンバーに名を連ねた。国際舞台での経験は豊富だが今回は特別な舞台となる。

「うれしい思いと五輪というプレッシャーもあります。(五輪は)あまり出るという立場で見たことがないので、自分が出る立場だと考えるとゾッとします」と菊池本人が語るように、五輪は自身にとっても初舞台。加えて母国・日本、出身地でもある東京が舞台と、その重圧は計り知れない。

 今大会のメンバー選考は国際大会での実績が重視されているという見方が大半だが、今季の菊池は開幕から打撃好調で首位打者争いを展開するなど、実績だけでなくコンディションも良い。それでも「良いスタートを切れましたが、夏なので暑さとの戦いもあります。まずは合宿でしっかり体をケアしながら、自分のペースで調整できれば、良いコンディションにもっていけるのではないかと思います」と慢心はない。

 実力と経験を兼ね備えた菊池には、プレーはもちろんチームリーダー的な役割も求められるはずだ。カープでは先輩・後輩問わず、積極的にコミュニケーションをとっており、12球団から選手が集い、短期決戦となる五輪では、菊池の存在はチームに良い影響をもたらすはずだ。

「いつも通りの自分でいるために周りの人をいじったりしますけど、こうやらなければという風には思っていません。自分にできることは変わりませんから」と本人が語るようにカープでの立場と変わらず自然体でい続けることが、菊池にも侍ジャパンにとってもプラスになる。

 今回のメンバーには、菊池を含めて山田哲人(ヤクルト)、浅村栄斗(楽天)とセカンドをメインポジションにする選手が3選手いる。過去大会での起用法や守備力を考えると、菊池のセカンド起用は最優先事項で、山田、浅村がファーストなど他ポジションを守るケースが有力だが、五輪は野手13人(うち内野手6人)体制。試合展開や状況次第では、サードやショートでの起用も考えられる。いずれにしても、過去に幾度となく日本を救ってきた菊池の『超絶守備』は、今回の五輪でも絶対に必要になるはずだ。

「毎大会そうですが、『やってやろう』という気持ちは特にありません。予測と準備を忘れず、自然体でいられればいつも通りにできるのではないかと思います」

 普段カープで見せる“いつも通り〟の菊池でいることができるかがポイントとなりそうだ。打順は、代表で座り慣れた2番はもちろん、下位打線での起用も想定されるが、注目したいのは『スピード』と『小技』。特に犠打を含めた『小技』は、1点をもぎ取りたい局面でより重要度が増す。意外性のある打撃はもちろんだが、ここぞの場面でしっかりと犠打を決めるような渋い働きにも期待したい。