東京五輪の野球競技が、本日7月28日(水)に開幕する。カープから選ばれた森下暢仁にとっては、初のトップチーム選出が五輪という大舞台。プロ2年目、伸び盛りの23歳には、金メダル獲得に向けてフル回転が期待される。

カープ・森下暢仁投手。

◆成長著しい金メダル獲得のキーマン

「本来であれば、昨年開催されていた五輪なので、1年延期となり、今年、こうやって出場することができるのは本当にうれしいです」

 もし東京五輪が予定通り2020年に開催されていたら、森下暢仁の侍ジャパン選出はおそらく実現しなかっただろう。プロ1年目の昨季は10勝3敗、防御率1.91(セ・リーグ2位)で新人王を獲得。今季も開幕から2年目のジンクスとは無縁の投球を見せ、東京五輪という晴れの舞台で自身初となる侍ジャパントップチーム選出をつかみ取った。

 ストレートの威力、変化球の精度、コントロールなど、投手にとって必要な要素を高い次元で備える完成度の高さは、23歳の若さながらプロでもトップクラス。代表選出は初とはいえ、高校、大学と各カテゴリでは侍ジャパンに選出されており、国際舞台での経験も積んでいる。とはいえ、アンダーカテゴリとトップチームではレベルも重圧もケタ違い。ましてや初代表の舞台が自国開催の五輪となれば、その重圧は想像を絶する。それでも森下自身は「4年に1度しか開催されない素晴らしい大会に出場できるというのは、自分のこれからの野球人生にプラスになると思います」と、前向きに、そしてどん欲に、今回の五輪という舞台を捉えている。

 本番で気になるのが森下の起用法だ。本人も「しっかりと任されたところで、自分の投球が出来るようにやっていきたい」と語るように、おそらくは第2先発や状況次第ではリリーフ起用も予想されるだけに、先発ローテで回るカープとは違い、柔軟な対応が求められるはずだ。ただ、森下の先発起用が絶対にないかというと、そうとも言いきれない。

 メンバー発表当初、五輪で先発投手の軸として考えられていたのは田中将大(楽天)、大野雄大(中日)、菅野智之(巨人)の3人。しかし、発表後に菅野が代表を辞退。加えて田中、大野の2人も今季は決してベストな状態とはいえず、先発投手陣には一抹の不安がついて回る。

 投手陣では中川皓太(巨人)も出場を辞退。2投手の代わりに召集されたのは千賀滉大(ソフトバンク)と伊藤大海(日本ハム)だが、千賀は故障明け、伊藤はルーキーと、ともに『菅野の穴』を埋めるという意味では不安もある。五輪の日程は勝敗次第で最大5連戦の可能性がある。となると、森下にも先発起用の機会が巡ってくる可能性は十分あると言える。状況次第では、大会序盤で先発、終盤でリリーフ起用といったフル回転もあるだろう。

 悲願の金メダル獲得を目指す東京五輪、初選出の森下も「日本で開催ですし、絶対に勝たないといけない。本当に重みのある大会だと思います」と、その重要性は十分に理解している。伸び盛りの若武者が、東京五輪という大舞台で『金メダル獲得』のキーマンになるかもしれない。