スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 オリンピックが始まった。1964年東京大会の聖火リレーにおける最終ランナーは広島県
三次市出身の坂井義則さんだった。

 坂井さん自身は被爆者ではないが、1945年8月6日、広島市に原子爆弾が投下された日
に誕生した。父親が被爆者健康手帳を持っており、つまり自身は“被曝二世”である。

 早大時代は競走部に所属し、陸上で東京オリンピックの代表選考レースにも出場してい
る。聖火台に灯をともす最終ランナーに選ばれたのは大学1年の時だ。大学卒業後、坂井
はフジテレビに入社し、スポーツ局などで活躍した。

 あれから57年。5月、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令される中、市内では走
らず聖火を受け渡す“トーチキス”が行われた。最後に聖火皿に点火したのは、カープOB
の新井貴浩さんだった。

 そして7月にIOCトーマス・バッハ会長が、来広し、平和記念公園を訪れた。そこで「
東京オリンピックは平和な未来への希望となるだろう」と述べた。バッハ会長には「ノー
ベル平和賞を狙っているのでは……」との声もある。

 バッハ会長が筋金入りの平和主義者であるのなら、原爆が投下された8月6日に黙祷を
呼びかけてもらいたい。長崎市に原爆が投下された9日も、とお願いしたいところだが、
オリンピックは8日に終了する。

 広島に原爆が投下された翌日の7日は野球の決勝戦が行われる。カープの4人を含む侍
ジャパンの選手たちには、是非金メダルを胸に飾って欲しい。

(広島アスリートアプリにて2021年7月26日掲載)

毎週月曜日に広島アスリートアプリにてコラム「追球カープ」を連載中。
※一部有料コンテンツ

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。