スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 この原稿を米国との決勝前に書いている。土曜日の夜、列島は歓喜に包まれていることだろう。

 準決勝の韓国戦が終わった時点で、日本の4番・鈴木誠也の打撃成績は0割6分7厘、1本塁打、1打点。決して褒められた数字ではない。

 しかし、随所に存在感は示している。2日の米国戦、3回裏、日本は坂本勇人(巨人)、吉田正尚(オリックス)の連打で1点を先制し、なおも2死1塁。ここで4番の鈴木は四球を選び、2点目につなげた。

 5対6と1点のビハインドで迎えた9回の同点も、鈴木の四球がきっかけとなった。5番・浅村栄斗(東北楽天)のライト前ヒットで三塁に進み、6番・柳田悠岐(福岡ソフトバンク)の内野ゴロの間にホームを駆け抜けた。稲葉篤紀監督がコンセプトに掲げた“つなぐ野球”の実践である。

 鈴木の後の5番は浅村の指定席だ。一発もあれば、器用に右に流すこともできる。強打者であると同時に巧打者でもある。

 今のカープに浅村ありせば、と思わずにはいられない。4番を生かすも殺すも5番次第なのだ。

 カープ全盛期の水谷実雄を思い出す。不動の4番・山本浩二の後を受け、強引に引っ張ったかと思えば、右に流してみたり……。併殺狙いのシュートをヒジをたたんでヒットゾーンに打ち返す技術には何度も舌を巻かされた。

 プロ野球は8月13日に再開する。カープからは12球団最多タイの4人が代表入りした。オリンピックの余熱を力に変えたい。

(広島アスリートアプリにて2021年8月9日掲載)

毎週月曜日に広島アスリートアプリにてコラム「追球カープ」を連載中。
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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。