レギュラーシーズンも残り40試合あまり。チームの勝敗はもちろん、個人記録も気になってくる時期になった。特にファンが期待するのが、ルーキーながらチームのクローザーを任される栗林良吏の“新人王”獲得だろう。開幕から抑えを任され、東京五輪でもクローザーを務めるなど、まさに“新人離れ”した活躍を見せている。

新人王の期待がかかる栗林良吏投手。

◆“史上最高レベル”の新人王争い

 9月3日終了時点で38試合に登板し、0勝1敗22セーブ、防御率0.48。

 例年であれば“新人王当確”と言っていい数字を残しているが、今季のセ・リーグ新人王争いは史上稀にみるハイレベルだ。

 すでに田淵幸一の持つ球団新人記録を超える23本塁打を放っている阪神・佐藤輝明――。

 3割近い打率をキープし、新人ではNPB初となるサイクルヒットを記録したDeNA・牧秀悟――。

 新人王争いは、この2人に栗林良吏を加えた三つ巴の様相を呈している。

 記者投票によって決まる“新人王”は数字はもちろん、いかに強いインパクトを残せるかも選考に大きく影響する。その意味では“長嶋茂雄以来の新人3打席連発”や“田淵幸一超え”の佐藤、“新人初のサイクルヒット”の牧のインパクトは大きい。

 もちろん栗林良吏も“新人開幕連続無失点記録”や“東京五輪のクローザー”など決して負けてはいないが、新人王を確実なものにするためにはさらなるインパクトを残す必要がある。

 ここでは、残りのシーズンで栗林に期待したい“インパクトのある3つの数字”を紹介したい。

①シーズン防御率0点台

 現在、防御率0.48という驚異的な数字を記録している栗林。新人という枠を取っ払っても球史に残る防御利率と言えるが、シーズン終了まで0点台をキープできれば“新人王”は一気に近づくはずだ。

過去の新人王で防御率0点台は1993年の伊藤智仁(ヤクルト/7勝2敗、防御率0.91)ただ一人。昨季新人王の平良海馬(西武)は防御率1.87、2015年にシーズン37セーブの新人記録を樹立した山﨑康晃(DeNA)も防御率は1.92だった。その意味でも“新人で防御率0点台”のインパクトは大きい。

②シーズン30セーブ

 現在、23セーブを記録している栗林だが、球団新人記録の25セーブ(2003年に永川勝浩が記録)はもちろん、30セーブの大台はクリアしておきたい。

 過去、セ・リーグで新人ながらチームのクローザーを務め、新人王に輝いたのは与田剛(中日)と山﨑の2人だが、ともにシーズン30セーブをクリアしている。

 ちなみに前述の永川は25セーブを挙げながら、10勝7敗、防御率3.34の木佐貫洋(巨人)に新人王争いで敗れている。やはり新人王を確実にするためには“30セーブの大台”はクリアしておきたい数字と言えるだろう。

③チームの最下位脱出

 チーム成績は栗林の個人成績とは無関係……とも言いきれないのが、クローザーという仕事。そもそもチームに勝利がつかなければセーブ機会は生まれない。

 栗林の登板機会&セーブ数を増やすためには、チームの勝利が不可欠だ。また、記者の“印象”という意味でも“最下位チームのクローザー”は選考においてはマイナス要素。ライバル・佐藤輝明が阪神で優勝争いをしていることからも、やはりチームの順位、勝敗は投票におけるインパクト面で大きな違いを生むはずだ。

 シーズンは残り40試合あまり――。栗林の“数字”はもちろん、ライバル・佐藤&牧の打撃成績にも注目しながら、シーズン終盤まで、この“史上最高レベル”の新人王争いを楽しみたい。