“柔軟性の獲得”が投球の質向上への近道
僕がトレーニングを担当している選手にオリックス・バファローズの山岡泰輔投手がいます。山岡投手も高校の頃から知っていますが、開脚をして股割りをしたとき、胸がつくほど、とにかく体が柔らかいのです。
しなやかで力強い、それが、プロ野球チームのエースと呼ばれるまでに成長した山岡投手の魅力の一つだと思っています。山岡投手の話はまたいつかこの連載で紹介させていただきます。
話を谷岡投手に戻します。彼のことは高校1年から知っていますが、出会った当初は、とにかく体が硬かったことを覚えています。最初に、開脚をして股割りチェックをするのですが、谷岡投手は肘さえつきませんでした。
さらにピッチングをみても力任せに投げる完全な力投型。素材は良いので投手として育てたい、ただ、柔軟性がない体のままだと、いつかケガをする可能性が高いと分析しました。そこで高校の監督と話をして、股割りで頭がつくようになるまで本格的なピッチング練習を禁止することにしたのです。そこでまずは、体を柔らかくするトレーニングに励みました。
イメージとしては車の整備と似ているかもしれません。どれだけ性能が良い車でもきちんと手入れしないと、燃費が悪くなりますし故障もしやすくなります。選手も一緒です。ポテンシャルを最大限発揮できるように、土台をしっかりとつくる必要があります。
この土台ができないうちに投げ込みをしてしまうと、悪い癖がついてしまうケースがよくあります。そして、悪い癖がつくと、その癖を取り払うのに相当な時間がかかります。まさに悪循環。これが、投手としての土台ができないまま行う投げ込みのリスクの一つです。
谷岡投手が捕手を座らせての投球練習を解禁したのは、股割りで頭がつくようになってからです。柔軟性を高めるトレーニングをしたことで、見違えるように球質が変わったことを今でも印象深く覚えています。