短時間で練習の効率を高める「マンダーラート」とは?

柔軟性のトレーニングとは別に、谷岡投手に課していたことがあります。それが連載1回目でもお伝えした『目標設定」です。谷岡投手が在籍していた武田高校は、学校の方針により、野球部の練習時間はわずか50分。限られた時間の中で成果を出すには、何の能力を伸ばしたいか、どんな選手になりたいかを明確にして練習する必要があります。

そのためによく使うツールが『マンダラート」です。マンダラートとは簡単に説明すると、自分の目標を実現するための方法をより具体的にするための発想法の一つです。大谷翔平投手(現ロサンゼルス・エンゼルス)が高校時代に活用していた正方形のマス目からなる目標達成表と言えばピンとくる人もいるかもしれません。谷岡投手は、このマンダラートを使い、抽象的な目標ではなく、より具体的に、未来の自分を描いていました。

練習時間が長いチームは、ずっと練習を続けているうちに、自分はこういう選手を目指したいという目標が見えてくるかもしれませんが、武田高校は練習時間が短い。だからこそ、目標を決めて、そのために今何をしないといけないのかをしっかりと考える必要があったのです。

以上が谷岡投手の球速が劇的にアップしたトレーニングの一幕です。今回紹介したこと以外にも、色々なトレーニングをこなし150kmの速球を投げられるようになったのですが、体が持っている能力を最大限発揮するためには、その力を惜しみなく出力するための整備が大切です。

その整備に加え、自分との対話を通し進む方向を明確にしたことで、150kmの力強い速球を投げるプロ注目の投手へと成長していきました。

その谷岡投手、プロ野球選手になったとはいえ、まだ育成契約。高校からサポートしてきたトレーナーとしては、1日も早く「育成」の肩書がとれ、一軍の舞台で活躍する姿をみたいと思っています。広島出身選手ということで、ぜひみなさんも応援してくださるとうれしいです。

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高島誠(たかしま・まこと)
広島県東広島市の西条町にある、野球専門のトレーニングジム「Mac's Trainer Room」の代表。オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナー経験があり、現在も数多くのプロ野球選手とトレーナー契約を結んでいる。趣味はパルクールとサウナで、サウナ・スパスペシャリストの資格も持つ。
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