◆形だけ整えても上手く打てない。対投手の対策を練ることが大事

─二軍では堂林翔太選手やクロン選手など、一軍のレギュラーとして活躍を期待されていた選手も調整しています。

「堂林は今すごく良いですね。これまで堂林を見てきましたが、一番良い状態と言っても過言ではありません。今年は一軍で結果を残せていませんが、こうやって二軍で自分を見つめ直して、技術の引き出しが増えることで、打撃も安定していくのではないかと思います。とにかく今の二軍で一人だけ別格の存在です」

─打撃不調の選手を指導する際、どういったことを心がけていますか?

「選手は形を気にしすぎるところがあります。例えば、試合で1打席目に三振し、2打席目もおかしいなと感じたら、打撃フォームを整えることでその違和感を払拭しようとします。ただ、僕の経験上、フォームを見直すだけでは結果には結びつきません。低めのボール気味の変化球を振らない、逆方向に意識を向けてみるなど、〝対投手〟にフォーカスした対策を練る必要があります。自分の形だけ整えて打とうとしても上手くはいきません」

─数々の選手と接することで指導の幅も広がってきたのではないでしょうか?

「選手に自分自身で考えて動くことの大切さを気づかすことができるかどうかが一番大事だと思っています。あれをしなさい、これをしなさいとイチから言うのではなく、自分で考えて納得して行動に移せる選手に育てていくほうが選手のためにもなると思います」

─二軍の選手が鍛錬を重ねる由宇球場。東出コーチにとって由宇球場はどんな場所ですか?

「景色は良いのですが、現役時代はあの球場に行くのがすごく辛かったんですよね(苦笑)。そういう意味でも、『ここを抜けないといけない』、そういう気持ちにさせてくれる場所だと思いますね」

◆プロフィール
72 東出輝裕(ひがしで・あきひろ)
1980年8月21日生、福井県出身。1998年ドラフト1位でカープに入団。高卒ながら1年目から78試合に出場。2006年からはセカンドのレギュラーに定着。2008年、2009年はベストナインに輝いた。2015年限りで現役を引退し、2016年から一軍打撃コーチに就任。2020年からは二軍打撃コーチとして若手野手の育成に尽力している。