9月に入り、今季初のサヨナラ勝利を飾るなど、カープらしい粘り強い戦いが続いている。好調の打線を牽引する打撃陣のキーマンについて、カープOBの笘篠賢治氏に聞いた。

菊池涼介選手の復調が得点力アップのカギを握る。

◆SSK砲がもたらす得点の予感

 先週は絶好調の鈴木誠也、坂倉将吾の『SSコンビ』を推していましたが、そこに新たに菊池涼介も加わった『SSK砲』が相手バッテリーに脅威を与えています。この3人に回ってくると、得点が入りそうな予感がします。

 鈴木は12試合で10本塁打。止まらないですね。四番として文句なしの活躍です。何度も言いますが、彼が打つとチームが乗ってきますよね。

 そして菊池は、9月5日の巨人戦で本塁打を含む4安打4打点。五輪明けの頃は、インパクトの瞬間にしっかりと球を押し込めていなかったので、本塁打性の当たりもフェンス手前で失速していました。今はそのズレが修正され、きっちりと球を押し込めるようになっています。1番打者として活躍したシーズン前半の状態に近いのではないでしょうか。

 他球団を見ていると、五輪メンバーに疲れが見えています。楽天の浅村栄斗は何試合か休養を取りましたし、オリックスの吉田正尚は故障離脱。そんな中で鈴木と菊池は本当に良くやってくれています。疲れを感じているでしょうが、それを跳ね返す力強さを感じます。

 そして、なんと言っても坂倉ですよ。9月7日の中日戦では、9回2死一、二塁から逆転3ランを放ち、今季初のサヨナラ勝利を演出。さらに規定打席に到達し、打率リーグトップに躍り出ました。

 今季の坂倉は、バットを構えて、タイミングを取り、踏み出すという一連の動作の中で、球に対して頭が突っ込んだり、離れたりしていません。体の軸が全くブレていません。打つ前の準備段階の形が決まっていて、しっかりと自分の打てるポイントに体の動きを合わせている感じがします。球の見逃し方を見ても、打ちそうな雰囲気がありますよね。

 ここから「首位打者」という周囲の声が大きくなってくるでしょうから、その影響があるかどうか。個人成績表に名前が出てくると、意識するなというのが難しいものです。ただ、坂倉の性格からすると、そういうところは気にせずにプレーしそうな感じがします。

 今置かれている立場に関しても、完全なレギュラーとは思っていないはずです。巡ってきたチャンスをつかみ取るために、最後まで気を緩めずにやり抜く、そういうスタンスで試合に臨んでいると思います。今の状態のまま、無心でやり続けていれば、最後に良い結果がついてくるのではないでしょうか。期待して見守りたいと思います。