一軍に欠かせないカープの主力選手の2021年の声をお届けする蔵出し企画。今回取り上げるのは、野手キャプテン・鈴木誠也。9月9日の中日戦で、球団記録に並ぶ6試合連続本塁打を達成するなど、8月26日以降、13試合で12本塁打。圧倒的な存在感をみせる鈴木の言葉を、2021年の開幕前に行ったインタビューから抜粋してお届けする。
(広島アスリートマガジン2021年4月号で行ったインタビューをもとに編集)

4番として、野手キャプテンとしてカープを支える鈴木誠也選手。

◆自分が経験したことを若い選手に伝えていきたい

 カープは今季、2009年以来12年ぶりにキャプテン制度が復活した。野手キャプテンに鈴木誠也、投手キャプテンには大瀬良大地がそれぞれ就任。ここ数年若手が台頭し、生まれ変わろうとするチームを、3連覇を支えた投打の中心である2人が牽引する役目を担うことになった。

 そして迎えた2月1日、春季キャンプは野手キャプテンである鈴木の声出しで幕を開けた。首脳陣、選手、スタッフが集まった円陣の中心で、抱いていた思いをチーム全員に届けた。

 これまでの鈴木は打線の主軸としてプレーでチームを牽引してきた。しかしキャンプ初日の鈴木の行動は、今季から左胸にキャプテンマークを纏ったことで生まれた、自覚の現れだったのかもしれない。

「キャプテンマークを背負うからと言っても心境面に特に大きな変化はありませんが、(大瀬良投手と)2人でチームを引っ張っていきたいと思っています」

 昨季後半戦、佐々岡真司監督は若手選手を積極的に起用し、チームに新しい風を送り届けてきた。そして迎えた今季の一軍キャンプでは、カープの未来を担う若手選手が数多く抜擢された。3連覇を果たした頃と比べ、フレッシュなメンバーでのキャンプスタートとなった。

 若くしてチームの主力となり、カープのみならず日本を代表する選手となった鈴木。野手キャプテンに指名された事でプレーはもちろん、行動でも、若手を引っ張る役目が期待される。若手とのコミュニケーションについて聞くと、鈴木からこんな答えが返ってきた。

「僕が言うことではないかもしれませんが、とにかくみんなに頑張ってほしいです。狭き門を通ってプロの世界に入ってきているわけですし、大舞台で活躍することが一番の目標であり、やりがいだと思うので。僕自身、高校を卒業してカープに入ってから、うれしいことはもちろん、悔しい思いも何度も経験させてもらいました。悔しさを経験することで頑張れることもありますし、逆に喜びや達成感を味わうことで成長できる部分もあると思います。プロの舞台で同じユニホームを着ているので、少しでもそういう気持ちを感じてほしいですし、そのために自分にできることがあればアドバイスを送りたいと思います」

 2012年ドラフト2位でカープに入団した鈴木。高卒1年目から一軍で初安打を記録するも、その後に待っていたのはプロの壁だった。思うように結果が出ず、一軍定着に向けて悪戦苦闘の日々が続いた。球界を代表するスラッガーとして名を馳せている鈴木も、主力選手に成長するまでに多くの悔しさを経験し、それを力に変えてきた。だからこそ、目の前で鍛錬を続ける若手選手に、当時の自分を重ね合わせているのかもしれない。

「今だからこそ言葉にできるのかもしれませんが、プロ野球選手である以上、結果を出すまでに苦しさや失敗を経験することは、誰もが必ず通る道だと思います。僕自身も結果を求め過ぎるあまり、気持ちが先走り、空回りした時期もありました。でもそれを乗り越えて結果を残さないと、一軍の試合に出ることはできないし、レギュラーに定着することもできません。そのためには、必死に練習することも大切ですけど、さまざまなアドバイスをもらうことで成長のきっかけを与えてもらうこともありました。なので僕も、自分の思いや経験はもちろん、これまで僕がいただいてきたアドバイスを他の選手に伝えていければいいなと思っています」