クラブとしての活動中止前の練習試合では、精力的なプレーで輝きを見せていたMF野津田岳人。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、Jリーグが新たに5月末までのリーグ戦、ルヴァン杯の再延期を発表しました。当初はJ3を4月25日に、J2を5月2日に、そしてJ1は5月9日からと、段階的に公式戦を再開させる方向で調整が続けられていました。

 ところがウイルスの感染は沈静化するどころか拡大の一途を辿っています。4月7日には東京をはじめ7都府県に緊急事態宣言が出され、広島県でも外出自粛要請が出されました。

 現状では4月25日〜5月27日に開催予定だったJ1〜J3のリーグ戦とルヴァン杯の公式戦123試合の延期、そして5月30日以降の日程は白紙となりました。選手たちからすれば試合をやりたいのにできないという、もどかしさもあるでしょう。再開に向けて動き出していたところだけに、モチベーションを保つのが本当に難しいと思います。

 ただ、その中でも選手たちは本当によくやっていると思います。私も何度か練習を見てきましたが、メンタルの部分でも本当に頑張っています。誰も経験したことがない、非常に難しい調整を強いられる中サンフレッチェの選手は、しっかりとピッチに立って笑顔で練習に臨んでいました。

 これはサンフレッチェというクラブの伝統というか、本当に根がマジメな選手の良い部分がはっきりと出ています。一人ひとりが素直でマジメな点は、昔から脈々と今の選手たちに受け継がれています。こういう状況下だからこそ、逆にクラブとしての良さ、強さが浮き彫りになった気がしますね。

 これまでも負けが込んでチームの状態が落ちそうなときでも、グッと一つになって悪い状況を乗り越える力があるチームでしたし、今回の件で、さらにその思いが強くなりました。練習の見学が当面中止、そしてトップチームの活動も一時休止となりサポーターの方も心配されていると思いますが、選手たちはやるべきことをやっています。その部分では安心してほしいと思います。

 アスリートにとって本当に厳しい状況ですが、こればかりは仕方ありませんし良い意味で諦めが必要です。「もうダメだ」という放り投げる意味での諦めではなく、良い意味で状況を受け入れて気持ちを切り替えるということです。頼もしいのは選手たちがこんな状況下でも状態を上げていることです。各自がさまざまなポジションができるように取り組んでいますし、野津田などはボランチで、ものすごく良い仕事をしていました。

▼ 吉田安孝(よしだ やすたか)
1966年11月22日生。広島県出身。元サンフレッチェDF。現在は広島テレビ「進め! スポーツ元気丸」などのサッカーコメンテーターとして活躍中。