フルイニング連続出場の記録が途絶え、約5年ぶりの二軍降格も経験。8月下旬に右膝半月板の手術を余儀なくされるなど、昨季の田中広輔はシーズンを通じて大きな苦境に立たされた。完全復活を目指す今季は新たに選手会長を託され、チームリーダーとしての役割も強く求められる。新型コロナウイルスの感染拡大で先行きが不透明ななか、黙々とトレーニングを続ける背番号2の胸中に迫る。

完全復活を目指す今季は選手会長を託され、チームリーダーとしての役割も求められる田中広輔選手。

 プロ6年目を迎えた昨季、田中広輔が大スランプに陥った。春先から打撃不振が続き、規定到達者の中ではリーグ最下位が定位置に。不動のリードオフマンとして強力打線を牽引してきた男が、出口の見えない長いトンネルにはまり込んでいた。

 初夏を迎えても調子が上向くことはなく、6月20日のオリックス戦で15年4月1日から続いていたフルイニング連続試合出場記録がストップ。以降は1番や8番での単発出場が増え、8月22日には出場選手登録を抹消された。田中の二軍降格はフリー打撃の打球が頭部を直撃した、ルーキーイヤーの14年9月19日以来のことだった。後に故障が判明するとはいえ、不振を理由にしての降格は、まさにチームとしても想定外の出来事だった。

「悔しい思いをしたことで、『今まで順調にきていたんだな』ということを改めて感じさせられましたし、そう思うと同時に『そんなに甘くない世界だ』ということを再認識させられた、そういうシーズンでしたね。今までもいろんなことに気を付けながら、野球中心で送っていた生活だと自分では思っていました。ですが、まだまだ足りないなと。そういうふうに感じさせられた部分がありました」