プロ1年目の2014年、開幕3戦目に『8番サード』でプロ初スタメン出場を果たした田中広輔選手

二つ返事で選手会長に就任

 連日続く激しいプレーの数々は、知らぬ間に田中の体を蝕んでいた。降格直後に判明したのは右膝の負傷。シーズン中ではあったが、田中は迷うことなく右膝半月板の部分切除手術に踏み切った。走攻守すべてに関わるケガでもあり、術後は2020年シーズンに向けて調整の遅れも心配された。ところが春季キャンプでは初日からフルメニューを消化。実戦形式の練習に移行してもバットで快音を響かせ、守備の面でも安定感のあるプレーで首脳陣を納得させた。

「正直、手術明けのシーズンなので心配な部分もありました。ただ、ここまでは手術した箇所が悪化することもなく、そしてケガもなく来れているので、順調に調整できていると思います。しっかりとリハビリをやってきて良かったと実感することもできました」

 地道なリハビリを行っていた昨年11月には、會澤翼から引き継ぐ形で新選手会長に就任した。ルーキーイヤーから「ずっとリーダーとしての意識があります」と公言していた田中だけに、この就任要請を二つ返事で快諾。V奪還を目指すチームと共に、田中自身もリーダーとして捲土重来を期すことになった。

「昨シーズンから會澤さんには『次の選手会長を』と言われながらやっていたので、僕自身はずっと覚悟をしながら過ごしていました。なので正式に選手会長をやると決まったときは、すぐに『やってやるぞ』という気持ちになれましたね。選手会長になったことで以前よりも、より一層周りのことを見るようになりましたし、その中から改めて気付くことも多いです。それで気付いたことがあれば口に出して言う場面も増えましたし、そういったところは特に意識している部分です」

 チームの精神的支柱として一皮むけた田中は、グラウンド上でもリハビリ明けとは思えない動きを見せ続けた。オープン戦、3月の練習試合の段階では小園海斗との熾烈なポジション争いで優位に立ち、スタメン返り咲きが濃厚とも見られていた。ところが……、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月20日に予定されていたセ・パ両リーグの開幕戦の延期が3月9日に正式にアナウンスされた。