カープOBの笘篠賢治がカープ野手陣を徹底分析するコラム。今回は、9月下旬から出場機会が増えている上本崇司を取り上げる。

内外野を守れる守備と俊足が持ち味の上本崇司選手。

◆泥臭くやってきた部分を評価してあげたい

 この1週間の試合を見ると、上本崇司が目立っています。本当によく頑張っていると思いますね。大卒9年目。これまでスイッチヒッターに挑戦したりなど、苦労してきた選手ですし、ファンの方からしても応援してあげたくなる選手なのではないでしょうか。

 守備で印象的なのは9月21日の巨人戦。途中出場で内野から外野の守備に回ると、9回表1死一塁で、ハイネマンのセンター前に落ちそうな打球をダイビングキャッチで好捕。床田寛樹のプロ初完封を手繰り寄せたと言っても過言ではないビッグプレーでした。

 9月26日のDeNA戦でも、4回裏に先頭の佐野恵太のあわやセンターオーバーという当たりをフェンスに激突しながらキャッチ。こういったプレーを見ると、動物的本能を持ち合わせた選手という感じがしますよね。

 これまでは内野をどこでも守れる便利屋としてベンチにいてくれるありがたい存在でしたが、野間峻祥が下半身のコンディション不良で離脱したことで、外野でスタメン起用される試合が増えました。

 本職の二塁手としてレギュラーを獲るには、菊池涼介がいるため、少し難しいかもしれませんが、最近の試合を見ていると、外野にコンバートするのも一つの案だなと思いました。

 課題と言われてきた打撃では、9月28日の阪神戦で、貴重な追加点となる犠牲フライを打ったりと、打席数が少ないながら内容が良いですし、上本の場合、足も使えます。

 若手の成長が楽しみではありますが、上本のような泥臭くやってきた選手も評価してあげたいところです。

 30代になった今、一人の控え選手としてではなく、スタメンを争えるきっかけを掴んだような気もしています。残り試合は少なくなってきましたが、しっかりと活躍を続けることができれば、あわよくば“遅咲きのスター”になれる素質を持っていると思います。首脳陣もそういった見方をしてあげてほしいですね。