サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏がチームに対する愛情と情熱をぶつける全力コラム。サンフレッチェ広島は、11月1日時点で、11勝12分10敗でリーグ10位。10月下旬には城福浩監督が退任し、今季の残り試合は沢田謙太郎ヘッドコーチが指揮を執ることが決定した。今回のコラムでは、新たに生まれ変わろうとするチームに心待ちにされているストライカーについて取り上げる。

10月3日の名古屋戦でゴールを決めた浅野雄也選手。

◆試合の勝敗のカギを握るストライカーには貪欲さとガムシャラさが必要

 ドウグラスのハットトリック、さらにワントップに起用された浅野雄也のゴールなど、思い描いてきた理想の攻撃が形となり、9月18日の柏戦から10月3日の名古屋戦の4試合中3試合で勝利。計6ゴールを決めることができました。

 まずは9月18日の柏戦(○3-0)でのドウグラスのハットトリックから触れていきましょう。前節の横浜FM戦でも得点を決めていましたし、それまでも前線でハードワークを続けてきていました。その状態の良さがもたらした3得点だと思いますね。

 特に1点目は、ドウグラスのストライカーとしての動きが光りました。オフサイドにならないようにゆっくりと横へ膨らむ動きをしながら、ラインを意識して様子を伺い、ボランチの青山敏弘と連携が取れたときに一気にトップスピードで縦の動きに変える。これは相手DFとの駆け引きだけではなく、味方との駆け引きもあったはずです。それに応えた青山の芸術的な縦パス。見惚れてしまうほど美しいコンビネーションでしたね。このコラムでもずっと言ってきていますが、こういった駆け引きの技術は、ぜひ若い選手にも磨いていってもらいたいですね。 

 10月3日の名古屋戦(○1-0)は、ドウグラスが9月26日の札幌戦(○2-0)でケガをしたため、浅野がワントップで起用されました。この巡ってきたチャンスを浅野が見事にモノにしてくれました。

 荒木隼人が中盤で鋭くカットしたボールを受け取ると、ドリブルで運び、ここしかないという角度でシュートを放ちゴール。浅野はパンチ力もスピードもあるだけに、近い将来エースストライカーになれる選手だと思っています。

 ドウグラスとは違い、スピードを全面に出して相手の裏のスペースを脅かすことができる選手です。9月22日のC大阪戦でも浅野らしい動きが何度もありました。決定的な場面で2度オフサイドになりましたが、これはそれだけ裏を狙って動いているという証拠です。どんどん挑戦していいと思います。

 相手DFからすると、いつの間にか背後を取られてしまうのが一番の脅威。それだけに持ち味を発揮すれば相当嫌な選手だと思いますね。浅野に求めたいのは数字への貪欲さ。シーズン最初の頃は2桁得点を目指すと言っていましたが、言葉にしたからには〝なにがなんでも絶対に2桁は取る〟という気持ちを見せてほしいですね。

 かつてのエースストライカー佐藤寿人は、常にストイックに自分のプレーや得点について考えていました。試合の勝敗のカギを握るストライカーにはそれくらいの貪欲さとガムシャラさが必要だと思います。