思わず心を奪われる!カープの話題をゆる~くまったりと展開してくれる“オギリマワールド”。関東出身ながら中学生からカープファン。独自のタッチで描かれるイラストを交えたコラムでおなじみのオギリマサホが、広島アスリートマガジンWEBで、新たなカープの魅力を切り取る。今回スポットを当てたのは、癒し系の雰囲気が漂う2人の投手。その魅力!?をオギリマ視点でゆる~く取り上げる!

◆野球部の洗礼を感じさせない雰囲気をまとった選手

 昭和のスポ根マンガを見て育った世代なので、野球部にはある種の恐ろしさを感じている。神社の階段をウサギ跳びで昇り降りするような猛練習に、先輩からのしごき、何かにつけて求められる体育会系的ノリ……。勝手な想像とは分かっていても、恐らく自分は野球部に入部したとしてもひと月も持たないのではないかと思ってしまう。逆にそうした野球部生活を経てプロ入りした選手は、さぞかし精神的にタフな人たちなのだろうと、尊敬の気持ちすら生じる。

 ところがプロ野球を見ていると、「本当にこの人は、その厳しい野球部の洗礼を受けてきたのだろうか……?」と思ってしまうような、ノホホンとした雰囲気をまとっている選手がいる。彼らは時に「天然」とか「宇宙人」、「不思議ちゃん」などと呼ばれ、切った張ったの勝負の世界において一服の清涼剤となっている。

 カープにおいて、こうしたノホホン系選手の二枚看板と言えば、床田寛樹と岡田明丈ではないだろうか。二人とも柔和な顔立ちで、優しそうな雰囲気を漂わせているが、癒し系なのは外見ばかりではない。我々は言動をインタビュー映像や記事からしか知ることができないが、それでもその端々からノホホンとした雰囲気を感じ取ることができる。

 たとえば今年8月29日、2勝目を挙げて、坂倉将吾とともにお立ち台に上がった床田を見てみる。インタビュアーから「會澤捕手とバッテリーを組みましたけれど、リード面など頼もしかったですか」と聞かれると、床田は一瞬沈黙し、その後「すごいたのし……ん?た……たのもしかったです」とたどたどしく答えた。

 続けて「5か月ぶりの白星でしたが、この間、床田投手を支えてくれていた気持ちはどういったものでしたか」と聞かれると、困惑したように頭に手をやりながら苦笑いし、隣の坂倉に「何て言ってた?」と助けを求めていた。その姿は、客席から「がんばれー」と声が飛ぶくらいで、球場中にホンワカした雰囲気が漂ったのである。

 岡田の方も、過去のヒーローインタビューを思い出してみれば、ニコニコしながら「よかったです」「うれしいです」とたどたどしく話している姿が頭に浮かんでくる。また、ガッツポーズを求められたはずが猫の手ポーズになっていたり、北別府学などの有名な球団OBの顔がわからないとTV番組で告白していたり……と、思い出されるのはノホホンとした姿ばかりだ。

 このように感じているのはファンばかりではないようで、床田についてはチーム内でも「不思議ちゃん」と呼ばれているようである(※1)。

 また岡田も、2017年リーグ優勝時のビールかけで、両手にビール瓶を持って自分で自分にビールをかけている様子が「可愛すぎるやろ!笑 岡ちゃん!」というコメント付きで今村猛のインスタにアップされたことからもわかるように、チームメイトも同様の認識なのだろう。

 しかし、両者は単にノホホンなだけではない。床田は今シーズン、前半こそ二軍で再調整を余儀なくされていたが、8月に昇格すると圧巻のピッチングを見せて、9月の月間MVPにも選出された。こうしたすごい投球と、ノホホンとした雰囲気とのギャップが、我々を惹きつけるのだと思う。

 岡田については、先日右肘の手術を受けたことが発表された。一日も早く回復し、また剛速球を見せてもらいたいものである。そしてまた、ヒーローインタビューでノホホンとした雰囲気を感じられるのを、我々も心待ちにしている。

※注1:「日刊スポーツ」2019年3月5日

https://www.nikkansports.com/baseball/column/bankisha/news/201903050000680.html

 

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。