クライマックスシリーズ進出こそ逃したが、シーズン終盤の追い上げや若手の躍動など、来期以降へ“明るい話題”もあった今季のカープ。その陰にはタイトルホルダーの鈴木誠也、九里亜蓮、新人王受賞の有力候補・栗林良吏といった選手だけでなくチームを土台から支える“陰の功労者”の存在があった。

◆MLBで重宝されているK/BB。カープで抜群の数値を残したのは・・

今季の後半戦、セットアッパーとして活躍した島内颯太郎投手。

 NPB新人セーブ記録に並ぶ37セーブを記録し、新人王の有力候補となっているドラフト1位・栗林良吏の存在感がどうしても際立つが、ドラフト2位ルーキー・森浦大輔も1年目からチームに大きく貢献した。

 登板数は栗林を上回るチーム最多の54試合。3勝3敗17ホールド、防御率3.17。20ホールドポイントは塹江敦哉に次いでチーム2位の数字だ。仕事場がほぼ「9回」に限定されているクローザーと違い、戦局や試合展開に応じてフレキシブルな対応が求められる「中継ぎ」のポジションで、ルーキーがチーム最多登板を記録したという事実は見逃せない。

 登板数だけでなく、防御率、ホールド数を見ても1年間通して安定した投球を見せてくれたのがわかる。

 今季はいわゆる「ルーキー当たり年」であるため新人王レースにその名が挙がることはほとんどないが、例年ならば間違いなく「有力候補」と呼んでもいい数字。

 貴重な左のリリーフとして、来季以降もカープに大きく貢献してくれるはずだ。

 先発陣では最多勝を獲得した九里、東京五輪にも出場した2年目の森下暢仁が躍動したが、エース・大瀬良大地の安定感はやはりチーム随一だった。開幕直後の4月にコンディション不良で一次登録を抹消されるなど、シーズン通して「ベスト」のイメージこそなかったが、シーズン最終登板で今季初完投&初完封を記録し、規定投球回にも到達。自身2年ぶり、5度目の2ケタ勝利を決めた。

 特筆すべきはQS(クオリティスタート=先発して6回以上を投げて自責点3位内)だ。20回は柳裕也(中日)と並んでリーグトップ、QS率87%(先発23試合中QS20回)はリーグダントツ。「安定感」という意味では九里や森下を上回る内容だったといえる。

 またK/BBという指標を見ると、少し意外な結果な選手がチームトップを記録している。K/BBとは奪三振数を四球数で割った数値で、「四球1個あたりでいくつ三振を奪うか」を示す。「コントロールが良く、かつ三振も奪える」投手であればあるほど数値が上がり、MLBなどでは投手の実力を測るうえで日本よりも重宝されている。

 K/BBは一般的に3.5を超える「優秀」とされるが、今季のカープで唯一これをクリアしたのが島内颯太郎の3.64だ。

 リリーフとして今季15ホールド、51試合で49回を投げ、投球回数を超える51の三振を奪いながら与えた四球は14。9イニングあたりの奪三振率は9.37で、同四球率は2.47。「四球を出さないこと」と「三振を奪えること」を見事に両立させた。来季以降、さらなる飛躍も期待できるだろう。

 野球とは「集団競技」と「個人競技」が融合された特殊なスポーツだ。投手対打者、個と個の対決が積み重なり、チームの勝敗が決まる。

 当然ながら、勝利を得るにはチームの”顔”と呼べるスター選手だけでなく、それを陰から支える選手の力も必要になってくる。

 今季、カープが積み重ねた63の勝ち星には、そんな選手たちの存在も大きく寄与している。