入団会見に臨む田中選手。目標とする選手として、当時の監督である野村謙二郎氏の名前を口にした

不動の1番としてリーグ優勝に貢献

 16年シーズンのカープの特徴として挙げられるのが、チーム打撃成績の急上昇だ。25年ぶりのリーグ優勝を成し遂げたカープ自慢の1番~3番トリオ“タナキクマル”で形成する上位打線はチャンスメーク、得点の両面で機能した。中でも1番に固定された田中の出塁率(.367)と得点(102)の高さが、前年比178点もの得点数増加を引き寄せる原動力となった。実際、25年ぶりのリーグ優勝を果たした直後のインタビューでは、印象に残ったシーンとして“出塁率”の高い試合をピックアップしている。

「特に四球はシーズン中も意識していました。印象に残っているのは、1番打者としての役割という目線では9月10日の優勝を決めた試合。安打は打てませんでしたが四球が3つ、死球が1つと全打席出塁して2得点したことが印象に残っています」

 走塁面でも河田雄佑コーチ(現ヤクルトコーチ)と突き詰めて練習に取り組むことで、盗塁数(28個)が飛躍的にアップした。走攻守全ての面でレベルアップし、同学年のライバルと肩を並べるまでの選手へと成長した。

「昨季(15年)まで菊池(涼介)と丸(佳浩・現巨人)がキクマルコンビと呼ばれていて、僕もその中に加わってチームを引っ張りたいという意識をずっと持っていました」

 前年に引退した東出輝裕から背番号2を継承した田中は、プロ3年目にしてシーズン全試合フルイニング出場を達成した。カープにおけるショートでのフルイニング出場は、86年の髙橋慶彦、94年の野村謙二郎に続いて3人目だった。ポストシーズンでも打率.833、出塁率.882という桁違いの成績を残し、クライマックス・シリーズMVPを獲得。日本シリーズ進出を決める原動力となった。

 広島が歓喜に沸いた16年は、田中が名実共にチームを引っ張る存在となったシーズンとも言える。入団3年目の時点で、すでに不動のリードオフマンは『タナキクマルトリオ』として常勝チームに欠かせない存在となっていた。

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