カープの鈴木誠也(27)がポスティングシステムでのメジャー挑戦を表明した。6年連続打率3割・25本以上を記録したNPB屈指のスラッガーを巡って、メジャー複数球団による争奪戦が予想される。

プロ3年目となる2015年の春季キャンプ時の鈴木誠也選手。右は当時ルーキーの野間峻祥選手。

 ここでは、日本を代表する打者へ成長するまでの鈴木のプロ9年間の軌跡を辿る。今回は2015年、プロ3年目に挑む直前のインタビューから、外野挑戦への意気込みを語る当時の心境をお送りする。

◆自信があるのは肩。肩だけは負けていないと思っている

─守備についてお話をお聞きしたいのですが、昨季から外野を守る機会が増えてきました。

「二軍にいたときは内野の練習がメインで、外野の練習は少しだけという状況でした。なので正直、内野ではまだ通用しないという思いがありましたし、出るなら外野という気持ちがありました。でも、外野専門の先輩に申し訳ないなという複雑な気持ちを持っていました」

─今キャンプは、外野一本での練習を行っています。

「本音は内野手でいくのであれば内野一本、外野手であれば外野一本でやりたいですね。将来的には内野を守りたい気持ちはありますが、『今年は外野でいくぞ』と言われたので気持ちは固まっています」

─それはいつ頃言われたのですか?

「昨年11月に台湾から帰国した後に、緒方(孝市)監督から直接『来年は外野でいくぞ』ということを言われました」

─外野守備で難しい面を感じますか?

「先輩方の守備を見ているとすごいなと感じます。打球判断も少しのミスが命取りになりますし、このキャンプは外野守備の意識を高く持って臨んでいます」

─昨季、ライトからの返球で強肩ぶりを見せつけました。外野を守る上でやはり肩は武器になるのではないでしょうか。

「細かい面はまだまだですが、自信があるとすれば確かに肩ですね。肩だけは先輩にも負けてはいけないと思っています」

─キャンプでは守備のみならず、走塁も重要視される練習が組まれています。

「相手の隙があれば、どんどん走っていきたいなと思っています。昨年はここで走らなくてもいいという場面で走って、ミスを犯したこともありました。チームに勇気を与えるような走塁をもっとできるようになりたいですね」

─走塁面でも高い意識が持てるのも、やはり昨季の一軍での経験が大きいのですね。

「正直、二軍で走塁ミスをしたときはここまで高い意識を持つことができていませんでした。一軍の試合独特の緊張感のなかで失敗を味わったことが大きいですね」

─厳しい練習が続きますが、今キャンプは気持ちの入り方が違うのではないですか?

「走攻守において自分の課題だけを潰していきたいです。もちろん毎日の練習はキツいですが(苦笑)、『今日はこれがダメだったから明日はこう試してみよう』と思えているので、毎日が充実していますね」

◆狙うポジションは 『1番・ライト』

─チームには堂林翔太選手、美間優槻選手、新人の野間峻祥選手など、同世代の選手が多いですが、やはり意識されますか?

「堂林さんや美間はサードで僕とはポジションが違いますし、そんなに強く意識することはありません。野間さんは同じ外野手ですが、新人というのもありますし、まだ分からない部分もたくさんあります。変に意識することなく、まずは自分に負けることなくやっていきたいと思っています」

─キャンプ中の練習では、新人の野間選手とセットとなり、ライトで練習をすることが多くあります。ポジションを狙う上でライバルになると思われます。

「一緒に練習する機会が多いですが、僕は野間さんの良い部分があれば、参考にしたいですし盗みたいなと思っています。たとえ野間さんとレギュラーを争って僕が負けたとしても、それは僕に実力がないだけなので、そこは割り切っています」

─周囲からは1番・ライトでの出場が期待されています。

「やはりライトに定着して1番を打ちたいです。数多く打席が回ってきますし、僕は初回に打席が回ってくる打順がやりやすいです。1番打者として初回からどんどん振って、相手投手をビビらせていきたいです」

─1番打者は出塁率が求められる打順ですが心がけていきたいのはどんな点ですか?

「丸(佳浩・現巨人)さんを見ていると、四球も多く選んでいますし、ボール球を振らないで甘い球を仕留めるというのが理想だと思っています。ただ、球を見極め過ぎてストライクまで振れなくならないように、試合に出続けて球を見極められるようになっていきたいですね。もし一番を打てれば『俺が打たなくても後ろはキク(菊池涼介)さんだし』と思えば気は楽ですしね(笑)」

─今季残したい具体的な数字を聞かせてください。

「まずケガなくレギュラーとしてフル出場したいです。具体的な目標は……分からないです(苦笑)。僕は結果を求めると力んでしまうので数字というよりも、とにかくチームに貢献しようと思えば自ずと結果はついてくると思っています」